第33話 カーラが婚約するそうです
「リリアナ様、実は私、カシス様と正式に婚約を結ぶことになりましたの」
久しぶりに会ったカーラが、嬉しそうに私に報告してきてくれたのだ。
「まあ、おめでとう。あなたとカシス様、本当にお似合いだものね」
半年前、カシス様に誘われ初めて2人で街に出掛けたカーラ。前日彼女の様子を見に行ったのだが、かなり不安そうな顔をしていた。私も心配でたまらなくて、翌日こっそり2人の様子を見守っていたのだ。
お互い気を使い合っていたせいか、ぎこちない空気が漂っていて、本当に心配した。途中クリス様のせいで、尾行しているのがバレてしまうというハプニングがあったが、その後は一気に距離が縮まった2人。
その日以降、お互い頻繁に連絡を取り合っていた様で、ついに2人が正式に婚約を結ぶことになった様だ。まさかあのカーラが、殿方と婚約をするだなんて。
幸せそうなカーラの顔を見たら、私も嬉しくてつい頬が緩む。
「リリアナ様、あの日あなた様が私の背中を押してくださったから、カシス様と心が通じ合う事が出来たのです。本当にありがとうございました」
「あら、私は何もしていないわ。それより、婚約披露パーティはいつ行うの?もちろん、盛大に行うのでしょう?」
「ええ、再来月の私の12歳のお誕生日に婚約披露パーティを行おうって、カシス様が提案してくれて。正直私は、あのろくでなしが王都に戻ってくる前に、婚約披露パーティを行いたかったのですが…」
あのろくでなしとは、カーラの兄、カルロス様だろう。カルロス様は来月、貴族学院に通う為に、王都に戻ってくるのだ。
「カーラ、大丈夫なの?その…カルロス様の件…」
カーラはカルロス様のせいで、地獄を見て来た。漫画の世界のカーラは、カルロス様にずっと酷い仕打ちを受けて来たせいか、自己肯定感が低く、結局イザベルに依存する形で彼女に尽くしていたのだ。またあの男のせいで、カーラが病んでしまったら…そう考えると、不安でたまらない。
「あんなろくでなしなんて、もう怖くも何ともありませんわ。もう昔の私ではありませんし。この前久しぶりに会いましたが、完全に私にビビっておりましたし。私には、リリアナ様とカシス様がついていて下さっておりますし。カリス様もあのろくでなしをかなり警戒してくれていて“何かあったらすぐに報告する様に”と言って下さっておりますから」
そう言って笑顔を向けたカーラ。どうやらカシス様も、カーラがカルロス様から酷い暴言や暴力を受けていた事を知っていらっしゃる様で、かなりカルロス様を警戒しているらしい。
まあ、さすがのカルロス様も、公爵令嬢で王太子殿下の婚約者の私と、公爵家の嫡男のカシス様に睨まれていては、カーラに手出しは出来ないだろう。それに両親も、もうカルロス様の言う事は聞かないだろうし。
「それなら良かったわ。再来月のあなた達の婚約披露パーティ、もちろん私も参加させてもらうわ。カーラもついに愛する人と結ばれるのね。私も嬉しいわ。私達、必ず幸せになりましょうね」
「ええ、もちろんですわ。私、カシス様と結婚しても、ずっとリリアナ様の為に働き続けますので、ご安心を」
そう言って胸を叩いているカーラ。
漫画の世界では、イザベルに全てを注いできたカーラ。この世界では、ぜひ幸せになって欲しい。私はそう願っている。
「それじゃあ、私はそろそろ行くわね。早く戻らないと、クリス様がまた迎えに来ちゃうといけないから。今日は王宮までわざわざ足を運んでくれて、ありがとう。ごめんね、本当なら私がカーラの家に足を運ぶべきなのだけれど」
来年から私も貴族学院に入るため、それまでにすべての王妃教育を終わらせるべく、今急ピッチで進めているのだ。そのせいで時間が取れず、カーラに王宮まで足を運んで貰ったのだ。
カーラも婚約披露パーティの準備で忙しいのに、本当に申し訳ない。
「クリス殿下なら、乗り込んで来そうですね…リリアナ様、もし本当にクリス殿下と結婚するのが嫌になったら、全力で協力いたしますので!」
「それはどういう意味かな?カーラ嬢。リリアナは僕と結婚するのが嫌になる事はないから、変な気遣いは無用だよ。リリアナ、遅いから迎えに来たんだ。それで、カーラ嬢の話は何だったのだい?」
いつの間にか私たちの元にやって来たのは、クリス様だ。未だにカーラ様を警戒しているクリス様。私の様に転生者ならまだ分かるが、転生者でもないクリス様が、なぜそこまでカーラを警戒するのか全く分からない。
まあ、単純にカーラに嫉妬しているだけなのかもしれないが…
「私、正式にクラシックレス公爵家の嫡男、カシス様と婚約する事が決まりましたの。それで、一番にリリアナ様にご報告したくて」
「やっとカーラ嬢も婚約したのだね。それはおめでとう。婚約者が出来たのだから、今後はカシス殿との仲を深める事に、全力を尽くしてくれ。リリアナの事は、僕に任せてもらって大丈夫だから。それにしてもめでたいな。おめでとう、カーラ嬢」
なぜかものすごくクリス様が喜んでいる。どうしてクリス様が、そんなに喜んでいるのかしら?
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