第21話 カーラ様のお家にお邪魔します
はぁっとため息をついたクリス様。
「分かったよ…リリアナが望むことは、全て叶えてあげたいからね。でも、万が一何か嫌な事があったら、すぐに報告してくれ。やっぱり心配だから、王宮から優秀な護衛を3人…いいや、5人手配して。それから」
「クリス様、いい加減にしてくださいませ」
いくらなんでも、やりすぎだ。確かに漫画のカーラは、かなり危険な人物だったが、今のカーラはそこまで危険ではないはずだ。
「分かっているよ。でも、どうしても心配で…」
転生者でもないクリス様が、どうしてそこまでカーラを嫌うのか、さっぱりわからない。でも、クリス様がそこまで心配するという事は、やはりカーラには何かあるのかもしれない。
私も一応、警戒はしておいた方がいいかもしれないわね。
なんとかクリス様の許可が下りたため、翌日、早速カーラの家に向かう準備を進めた。そうだわ、カーラの為に、このお菓子も持って行かないとね。
料理長に頼んで作ってもらった、ヘルシーなゼリーだ。この国にも、寒天によく似た食材があり、それをゼリーにしてもらったのだ。カロリーが低い割に美味しいため、私も好んで食べている。
それから、これとあれと、他には…
「お嬢様、そろそろ出かけないと、約束のお時間に間に合いませんよ」
「まあ、もうそんな時間なのね。昨日のうちに、準備をしておけばよかったのだけれど…」
心配性のクリス様を説得するのに手間取ってしまい、昨日はいつも以上に帰りが遅くなってしまったのだ。この3ヶ月、自分で言うのも何だが、クリス様に物凄く愛情を注いでもらっている。
漫画でのクリス様は、どちらかというと自分の気持ちを表現するのが苦手な人間に見えたが、実際に接してみると、全然違った。全力で愛情を表現してくださるのだ。
やはり漫画で読むのと、実際に接するのとでは、また違うのだろう。とはいえ、クリス様は結局リリアナではなく、イザベルの言う事を信じてしまうのよね…
そう考えると、なんだか複雑だ。でも、今思えば、学院に入ってからのリリアナは、あまりクリス様との時間を過ごしていなかった気がする。もっとしっかりと2人の時間を作って、関係を密にしておけば、クリス様もリリアナの言う事を信じてくれるかもしれない。
それでもイザベルの言う事を信じる様な男なら、その時はこっちから願い下げだ。イザベルの悪事を暴いた後、円満に婚約を解消するのもいいかもしれない。
婚約を解消…
なぜだろう、胸の奥がチクリと痛んだ。漫画ではリリアナはクリス様を愛していた。もしかしたら、強制力というものが働いているのかしら?それで私も、クリス様に好意を…
「お嬢様、いい加減に出発しないと間に合いませんよ!」
いけない、私ったらまた余計な事を考えてしまったわ。今はカーラの家に向かう事が専決よ。
急いで準備を整え、馬車に乗り込んだ。家からカーラの家までは、馬車で10分程度、なんとか間に合いそうね。
しばらく進むと、カーラの家が見えて来た。あら?門のところで待っていてくれているのは。
間違いない、カーラとご両親だわ。まさかご両親まで、待っていて下さっているだなんて。
馬車が停まると、急いで降りた。そして
「お待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。わざわざ門のところで待っていて下さったのですね、ありがとうございます」
カーラとご両親に、頭を下げた。
「リリアナ様、今日はわざわざお越しくださり、ありがとうございました。あなた様が謝る必要はありませんわ。私が待っていたくて、待っていたのですから」
嬉しそうに私の元に駆け寄ってきたのは、カーラだ。すっかり元気になったカーラ。この前会った時よりも、また一段と綺麗になっている。この子、きちんとケアをすれば、とても美人なのね。
「リリアナ嬢、本日は我が家にお越しいただき、ありがとうございました。それから、3ヶ月前のお茶会の件は、本当にお世話になりました。あなた様のお陰で、息子の悪事に気づく事が出来ました」
「まさか息子がカーラをあのように陰湿に虐めているとは、夢にも思っておりませんでした。ですが、思い返してみれば、不自然な点はいくつもありました。まさか使用人からも、冷遇されていただなんて。カーラになんと謝ればいいか…」
「カルロスが領地に行ってから、カーラは今までとは別人の様に明るい女性になりました。きっとリリアナ嬢が、カーラを陰で支えて下さったからなのでしょう。本当にありがとうございました」
「リリアナ様は、カーラの恩人です。どうかこれからも、カーラの事をよろしくお願いします」
改めてご両親から、頭を下げられたのだ。息子の悪事を知って、カーラを守るためにろくでなしカルロスをすぐに領地に送った点を見ると、ご両親はまともな人間なのだろう。
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