第19話 疲れましたが楽しかったです
「クリス様、私は大丈夫ですわ。体力には自信がありますの。それに、私の為に時間を作って下さった教育係の方にも、ご迷惑をおかけいたしますし。私は予定通り、王妃教育を受けますわ」
確かに疲れたが、この程度でへこたれている訳にはいかない。まずはしっかりお勉強をマスターして、皆に認めてもらわないと。それから、王宮内にも味方を作っておいた方がよさそうね。
使用人たちとも、積極的に仲良くならないと。これからやらなければいけない事が、沢山ありそうだ。
「リリアナは相変わらずだね。それじゃあ、そろそろ昼食にしよう。お腹が空いただろう?たくさん食べて」
確かにお腹がペコペコだ。王宮のお菓子はとても美味しい。きっとお料理も、とても美味しいのだろう。
早速王宮で昼食を頂く。
「こちらの白身魚のソテー、ソースがとっても美味しいですわ。こっちのサラダのドレッシングも、最高です」
私の予想通り、どれを食べても美味しいのだ。全部私好みの味付けに、つい頬が緩む。
「リリアナの口に合った様でよかったよ。まだまだたくさんあるから、いっぱい食べて。このお料理も、リリアナが好きだと思うよ。こっちも」
次々とクリス様が、お料理を勧めてくれる。どれもこれも、おいしいものばかりだ。1人夢中になって食べていると、なんだか視線を感じた。顔を上げると、なぜか泣きそうな顔のクリス様と目が合ったのだ。
「クリス様?どうされたのですか?どうしてそんな悲しそうな顔をしていらっしゃるのですか?もしかして、私ががつがつ食べていたので、引いてしまわれましたか?申し訳ございません」
いくらお料理が美味しいからって、さすがにがっつきすぎよね。私は公爵令嬢なのに、恥ずかしいわ。
「違うんだ。ちょっと悲しい事を思い出してしまって。僕はリリアナが美味しそうに食べる姿、とても魅力的だと思うよ。だからどうか、遠慮せずに食べて欲しい。その方が、料理長も喜ぶと思うし」
確かに料理長も、残されるよりも全て食べてもらった方が嬉しいだろう。でも、私ばかり食べている訳にはいかない。
「それでは、クリス様も食べて下さい。このお魚、とても美味しいですよ。それにこっちも」
「僕は…」
「きっと料理長は、クリス様にも食べて欲しいと思っていらっしゃいますわ。食べられないのでしたら、食べさせてあげましょうか?」
はい、あ~ん。そう言わんばかりに、食べ物をクリス様の口に運んだ。
「美味しい。リリアナが食べさせてくれる食事は、本当に美味しいね」
「料理長の腕がいいのですわ。さあ、沢山食べましょう」
その後は2人、仲良く食事を済ませた。
そして午後
「いいですか、リリアナ様。王妃殿下とは、常に弱い者の立場に立ち、物事を考えないといけないのです。間違った事をしたら、注意してあげる勇気も必要なのです」
なるほど、王妃教育でその様に教育されていたから、漫画でのリリアナは、イザベルに色々と注意をしていたのね。彼女なりの優しさからだったのだが、どうやらイザベルには目障りだったのだろう。
あの女は、何を言っても聞かないから、私はあの女に関わるつもりはない。でもきっと、あの女は王太子殿下の婚約者でもある私に、色々と仕掛けてくる事は確かだ。学院に入学したら、十分に注意しないと。
「リリアナ様、聞いていらっしゃるのですか?」
「申し訳ございません。もちろん聞いておりますわ」
いけない、つい違う事を考えてしまったせいで、先生に怒られてしまったわ。今は王妃教育に集中しないと。
それにしても、王妃様になるためには、覚えなければいけない事が山ほどあるのね。何なの、この量は。
でも、クリス様の婚約者になると決めたのだから、頑張らないと!そんな思いで、その日は必死に勉強に励んだのだった。
「リリアナ様、お疲れ様でした。あなた様は呑み込みも早いし、何よりも頑張ろうとする姿勢がよく見受けられます。明日からも頑張りましょう」
「ありがとうございます。今後ともよろしくお願いいたします」
なんとか先生にお褒めの言葉を頂けたが、さすがに疲れた。とはいえ、私は公爵令嬢。疲れた顔なんて見せる訳にはいかない。
まだ陛下や王妃殿下、それにクリス様との夕食が残っているのだ。気を引き締めていかないと!そう思っていたのだが…
「あら?陛下や王妃殿下はどちらに?」
なぜか夕食時、クリス様しかいなかったのだ。
「父上や母上がいたら、リリアナがリラックスして食事が出来ないだろう?今日は初めての王妃教育でクタクタだろうから、2人には遠慮してもらったんだよ。さあ、食べよう」
私は別に、お2人がいらしてもよかったのだが。でも、こうやって私の事を考えてくれるクリス様の優しさが、なんだか嬉しい。漫画の中のクリス様には、負のイメージを抱いていたが、この人、そこまで悪い人ではないのかも…
今日は疲れたけれど、なんだか楽しかったわ。明日からもまた、頑張ろう。
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