ファイル.03 ツチノコ狂想曲(3)
ツチノコを探しに村に集まってきた人々は狂乱状態となっていた。
「ふふ、バカどもが騒いでおるわ。偽物に踊らされているなんて、誰も気づいていないだろうよ」
村役場の村長室で、窓から双眼鏡で彼らをのぞいていた村長がほくそ笑んでいる。
「何も無いこの山間の村にネモフィラを植えて五年。ようやくこの村の青い花も有名になり観光客も増えたが、所詮春だけしか咲かない花からな。継続して観光客を呼び込むには、他にも目玉が必要だった……」
村長は、机の上に置かれた懸賞金三百万円と書かれたリーフレットに目をやった。
「やはりツチノコは知名度があるからな。そして、懸賞金に踊らされて、バカどもがたくさんやってくる。お前たちが探しているのが、偽物だとも知らずに」
八十狩村では、昔からツチノコの目撃情報があった。
村長は、それを利用して村おこしをしようと、ツチノコによく似た見た目のアオジタトカゲを村の山林に放した。
そして、目撃情報が増えてから、ツチノコに高額の懸賞金をかけたのだ。
「仮にお前たちが生捕りにしても、ツチノコと違ってこのアオジタトカゲには手足が生えているから、偽物だと判定して懸賞金の支払いを突っぱねられる。まったく、我ながら、完璧な計画を思いついたものよ」
ツチノコの偽物としてこの村に放たれたアオジタトカゲは、半年間、ずっと人間たちから追われていた。
『くそ、なんで俺がこんな目に……』
『ふふ。可哀想なトカゲさん。人間たちが憎いだろう。さあ、おいで。私が力を貸してあげるよ』
この村にある小さな祠から、声が聞こえてきた。
『助けてくれるのか? あんたは……』
『ふふ、私は一応神様だよ。この地をずっと守ってきた神様さ。人間に追われている君が可哀想になってね。それに、最近は騒がしい人間が増えて、私も頭にきていたんだ』
この地の守り神は、アオジタトカゲの身体を巨大化させた。
『ふふ、その姿なら、人間たちに負けはしないよ。思う存分、君をいじめてきた人間に復讐するといい』
『おお、力がみなぎってきた。神様、ありがとう。待っていろ人間たち。俺をいじめた罰を与えてやる』
『まったく、私は平穏に暮らしたいのに、人間たちは、騒がしくして。もう我慢の限界よ。少しお仕置きしないとねえ』
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