怪異探偵№99の都市伝説事件簿

安珠あんこ

ファイル.01 鏡に映る迷子の少女と帰れない駅(1)

 この物語の主人公、九十九卯魅花(つくもうみか)は、怪異専門の探偵である。


 年は三十歳。

 身長が高く、背中まで髪を伸ばしている。

 

 彼女は、怪異が関係していると思われる事件を、彼女自身の特異能力によって解決していた。

 

 九十九卯魅花は鼻が効く。

 怪異の原因となる人外を臭いで感じ取れるのだ。

 だから、ある程度の距離なら大体の居場所もわかる。

 

 九十九卯魅花は物に魂を宿すことが出来る。

 どんな物体でも、付喪神(つくもがみ)にして、自分の頼れる仲間に出来るのだ。

 

 そして、九十九卯魅花は、過去に神隠しにあっている。

 翌日発見されたが、恐怖で彼女の髪は白く染まっていた。

 その時から、ずっと彼女の髪は白髪である。


 東京都杉並区高円寺。

 とある小説で有名になった賑やかな商店街のいっかくにある九十九探偵事務所が、彼女の仕事場である。

 ここで彼女は助手の鷹野サキとともに、怪異の事件に巻き込まれた依頼人を待ち受けているのだ。


 サキは童顔で身体が小さい。

 ショートボブの髪型も相まって、よく中学生と間違えられているが、年は二十七歳、アラサーである。


◇◇◇


 ある日、九十九探偵事務所に一人の女性が依頼を持ちかけてきた。

 彼女は、二宮春花(にのみやはるか)と名乗った。


 春花は年はまだ二十歳だというが、落ち着いていて、年齢以上に大人びた雰囲気をしていた。

 

「どうぞ、おかけになってください」

 

 探偵で所長の九十九卯魅花は、依頼人の春花を応接室のソファへと座らせた。

 

「失礼します。お飲み物をお持ちしました」


 九十九の助手の鷹野サキが、二人の前にコーヒーを置いた。


「ありがとうございます」


 春花はサキに軽く頭を下げた。

 

「それでは、今回ご依頼の件についてを詳しくお話を伺いたいのですが……」


「ええ、電話でお話ししたとおり、私には十六歳の、高校生の妹がいます。ですが、妹は今、この東京のどこかの駅から出られなくなってしまって、私に助けを求めてきているんです。でも、どの駅にいるのかがわからなくて、私その、助けようがなくて、困ってしまいまして……」

 

 春花は、妹の二宮百華(にのみやももか)が駅から出られなくなっているのは、怪異の仕業ではないかと考えた。

 そこで彼女は、インターネットで怪異を専門に担当しているという九十九探偵事務所を探し当て、妹の救出を依頼しにきたのだった。

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