第24話 古墳
小太郎(仮名)が通う小学校の校庭には、1.5メートルほどの高さの円い丘がある。ほぼまん丸の形で、南側にすべり台が設置されている。
いろんな方角から丘をよじ登ってはすべり降りるという遊び方をするのだが、1~2年生には少々難しいので、主に3~4年生の遊び場となっている。
小太郎の友だちで自他共に認める歴史オタクの英一(仮名)は、5年生になったころくらいから、「あの丘は古墳ではないか」と言い出した。
小太郎も、もう一人の遊び仲間の豪太(仮名)もウソだろうと思っているのだが、ホラ話は乗ったほうが楽しいので、英一がその話を始めるたびに「へー」と感心してみせる。
「古墳ってことは、ひょっとしたら、あの下に死体が埋まっているかもしれないの?」
小太郎がそう言うと、英一は「もちろん、その可能性は大きい。なにしろ、古墳はお墓だからな」と言ってうなずく。
そこで小太郎と豪太が「
放課後、3人は実地調査と称して、久しぶりに丘に登ってみることにした。
「どうです、教授? 本当に古墳でしょうか?」
豪太が記者を気取ってそう言うと、英一は丘の上をぐるりを歩き回り、腕を組んで言った。
「こんなに踏み荒らされてはわからんよ、君。掘ってみないことにはな」
「掘ったら、ハニワも出ますかね?
小太郎が踊るハニワの格好をして尋ねると、英一も踊るハニワの格好をして、
「出ますな、きっと」
と言い、3人はまた大爆笑した。
それからしばらく3人並んで踊るハニワのポーズで丘の周辺を行進した。下級生に「何やっているの?」と尋ねられるたびに3人は、「学術調査です」と答えた。
ハニワのポーズごっこはすぐに飽きてしまったので、今度は
3人がそれぞれ古墳に埋められた王、その家来、防人になる。王が防人に「防人よ、行け!」と言うと、防人は「はっ!」と答えて、丘から20メートルほど離れたジャングルジムまで走って行き、「おー!」と叫んで戻ってくる。
最初に防人になったのは小太郎だった。
小太郎はおちゃらけてジャングルジムまで走っていき、途中で拾った枝を剣のように空に突き上げて「おー!」と叫んだ。
それから振り返ると、丘の上に人影が3人見えた。クラスの誰かか下級生が仲間に入ったのかと思いながら戻ってくると、2人しかいない。
「あれ? 今、3人いなかった?」
と聞いてみたが、ずっと2人だったという。
次は豪太が防人になって走って行った。そして、ジャングルジムのところから丘を見ると、やはり3人立っているように見えたという。しかし、実際には小太郎と英一の2人だけだった。
英一が防人をやってみても結果は同じだった。
「これって……」
小太郎が言いかけて口をつぐんだ。英一も豪太も同じことを考えているらしいとわかったからだ。
「言わない方がいい」英一が言った。「そんな気がする。それから、一人になるのもよくない」
「じゃあ、どうするんだよ?」
豪太が少し震える声で言った。
「3人一緒に並んで校庭を出るんだ。校門を出れば、たぶん大丈夫だ」
英一が前を向いたままで言った。
「本当?」
「たぶんね」
3人は肩を組むと、その姿勢のまま丘を降り始めた。
ふと気がつくと、その影は4人分あった。
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