第24話 作戦会議

 翌日、教室に到着して、クラス替えのステータス画面を眺めていると鈴が登校してきた。そのタイミングで、ゆあちゃんがわざとらしい口調でしゃべりだす。


「あ、あ〜……昨日のりっくん、すごかったなぁ〜。ゆあ、ついていくのがやっとだったもんなぁ〜」


 何を言ってるんだ?こやつは。


「朝から下ネタやめてもろて。おはよ」


「下ネタじゃないもん!」


 ゆあちゃんが鈴に食ってかかった。


「あのさ、別にわたしに牽制なんてしなくてもいいのよ?こいつはあんたのもの。オーケー?」


「え?そ、そう?なら、いいんだけど……」


「オレ、別にゆあちゃんのものじゃ……」


「りっくん?」

 ニコッと微笑みかけられる。


「いえ、なんでもありません……いつもありがとうございます……」


「よろしい」


「てかさ、あんたたち学校のあとも訓練とかしてるわけ?」


「ああ、うちの庭に訓練場があるからな」


「へぇ、それ、混ぜなさいよ」


「別にいいけど」


「ええ!?また3人になっちゃう!」


「だから、盗らないってば。わたしたちはパーティなんだから連携訓練はしておいた方がいいでしょ?」


「そ、そうかもだけど~……う〜……(小声)せっかく2人っきりだったのに~……」


「それよりも、これからの作戦を立てましょ。東京駅ダンジョンをどう開放させるか、そして、どう攻略するか、について」


「ああ、そうだな」


 口を開こうとしたが、チャイムがなったので放課後にしようという話になる。



 そして、授業が終わり、オレの家の訓練場に鈴のリムジンで移動した。


「へー、意外と本格的じゃない」


 訓練場に入った鈴がキョロキョロしながら興味深そうに言う。


「だろ、お父さんがはりきって作ってくれたんだ」


「あんたんとこはいいわね、協力的な親で。まぁいいわ。今後について話しましょ」


 鈴が適当なイスに腰掛けたので、オレたちもそのあたりにイスを持ってきて座る。


「まず、わたしたちが目指す目的は一つ。はい、ゆあ、言ってみて」


「東京駅ダンジョンを攻略して、うーねぇとベルちゃんを救い出すこと」


「そうね。で、問題になってるのは、東京駅ダンジョンが厳重に監視されていて中に入れないってこと。ところで、あんた、東京駅ダンジョンには何回くらい潜ったの?」


「え?いや、覚えてないけど……100回は超えてたと思う」


「そう。わたしは50回くらい。それでも、1番下の階層しか探索できてないわ」


「オレは2階層の中盤まで」


 東京駅ダンジョンは、階層式のダンジョンになっていて、現時点で判明してる階層は3階層まであり、もちろん上に行けば行くほど敵は強くなっていく。小学六年生のときは、2階層のモンスターでも、戦えば命を落とすくらいには強かった覚えがある。


「今のあんたなら攻略できそう?」


「2階層まではいけると思う。けど、それより上は行ったことないからなんとも」


「わかったわ。なら、当面の目標は2つね。1つ、東京駅ダンジョンを政府にかけよって開放してもらう。2つ、東京駅ダンジョンを攻略できるだけの力をつける」


「まぁ、そうなるわな」


「どっちも難しそうだけど、鈴ちゃんには作戦とかあるの?」


「一応ね」


「聞かせてくれるか?」


「まず、ダンジョンの開放をお願いするには、それなりの実績をあげる必要があるでしょうね。高校生になって、正式な形でダンジョンに潜って、どこでもいいからダンジョンを攻略する。その実績を盾にして、東京駅ダンジョンの開放をお願いするって流れ」


「なるほど……」


 一旦、話を整理してみる。現時点で攻略されているダンジョンは、全30駅のうちの1駅のみだ。東京駅ダンジョンは、未踏破の29ダンジョンのうちでも特に死者数が多い難易度の高いダンジョンだと言われている。だから厳重に閉鎖されているし、鈴のやつが言うように、東京駅ダンジョン以外を攻略して足掛かりにするっていう意見は理解できる。

 いわゆる、難易度が低めだと言われているダンジョンすら攻略できないなら、東京駅ダンジョン攻略なんて夢のまた夢だからだ。


「鈴の考えはわかった。でも、おまえの意見通りにすると、高校生になるまで、あと1年は待たないといけないことになる。オレは嫌だ」


「嫌でもそうするしかないの。肝心の東京駅に忍び込めないんだから、オーケー?」


「ぐぬぬ……」


「まぁまぁりっくん。鈴ちゃん、もう一個の課題は?東京駅ダンジョンを攻略できる力をつけるって方」


「そっちは地道に努力するか、難易度の低いダンジョンを攻略して陸人みたいなチートスキルを手に入れる、のどっちかじゃないかしら?」


「まぁ、そうだよな。オレが10人いれば余裕で勝てるだろうし」


「何その自己評価、キモすぎなんですけど」


「うっせ。で、今の話をまとめると、高校生になるまでは力を蓄えろって話になるのか?」


「まぁ、そうね」


「おまえの考えはわかった。でも、それまでの間、ダンジョンに忍び込むのはやめる気ないぞ?」


「無茶をしないって約束するならいいわよ。ただし、わたしたちも必ず同行させること」


「……」


「りっくん?」


「嫌そうにするんじゃないわよ。最高戦力のあんたが死んだらこの計画はお終いなのよ?自覚しなさい」


「……最高戦力……へへ……そこまで言われたら頼られてやってもいい!」


「……ねぇ?ゆあ、このアホのなにがいいわけ?」


「へ!?り、りっくんはアホだけどカッコよくて、誰よりも優して、ゆあを守ってくれる王子様で……えへへ///」


「……聞いたわたしが悪かったわ。もういいわ、やめて」


 なんか正面から呆れたようなため息が聞こえた気がする。


「じゃあ、今日は普通に訓練しましょ。あのアトムとかいうロボと戦ってみたいわ」


「アトムと?おまえなんか、すぐやられるぞ?」


「……ねぇ?こいつマジでムカつくんだけど、なんなの?」


「りっくん、女の子には優しくしなさい」


「へいへい……」


 ということで、当面の目標が決まったオレたちはそれに向けて動き始めることとなった。

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