ダンジョンが義務教育になった世界で《クラス替え》スキルで最強パーティ作って救世主になる

1章 ダンジョンと鍵

第1話 ダンジョン災害

　2256年、空飛ぶ車が普及し、何もない空中に映像が投影され、海外旅行気分で宇宙に行けるようになった未来、それは起こった。

　JR山手線の直上30メートルに東京スカイラインという空飛ぶ鉄道が開通される日のことであった。

　人類が重力を支配しようとしたことがいけなかったのか、それとも東京スカイライン鉄道が天使の輪っかのように正円だったのがまずかったのか、それは誰にもわからない。

　とにかく、開通式の最中、東京スカイラインが囲う円内の都市エリアは、突如として亜空間に飲み込まれることになる。

　これが、のちに語られる《ダンジョン災害》である。

　亜空間に囚われた人々の数、200万人。

　囚われた人々の時間は止まり、長い眠りにつくこととなった。

　事件の直後、政府は威信をかけて、この大災害の調査に乗り出す。調査を始めると、東京スカイラインの各駅には、モンスターが巣食うダンジョンが形成されていることがすぐにわかった。30個の駅ごとに全く異なるダンジョンが出来上がっており、様々なモンスターが容赦なく侵入者を排除しようとするのだ。

　そして、もう一つ。このダンジョンに入ることができるのは、20歳以下の未成年であることも、すぐに判明した。

　ダンジョン災害から3年後、ダンジョン攻略が義務教育となった。

　未来ある若者に小学生のころから戦闘技術を叩き込み、ダンジョンを攻略させようというのだ。

　そして、さらに2年後、ダンジョン災害から5年後にあたる今日、弱冠12歳のある男がダンジョンに忍び込んでいた。彼は今はまだ小学6年生で、ダンジョンへの侵入が許可されているのは高校生からだというのにだ。

　毎週のようにダンジョンでの犠牲者が報道されている中、この少年はなぜダンジョンに忍び込むのか。

　命知らずなバカなのか？好奇心旺盛なバカなのか？

　どちらも当てはまるのかもしれない。しかし、彼には強い信念があった。

　【ダンジョンに囚われた家族を助けたい】

　それだけだった。

　今日この日、小さな少年が伝説を作る。難攻不落、攻略不可能といわれたダンジョンに対し、風穴を開けるのだ。

　ダンジョンにて得られる特殊能力、それを保持する人間のことを人々は畏怖の念を込めてこう呼んだ。《スキルホルダー》これは、人外の力を持つ少年少女たちが大切な人を助けるために戦う物語だ。