43話

あれは2年前、俺と陽、綾香の三人は避難所から移って仮設住宅で暮らし始めてしばらく経った時のことだ。俺は父さんと母さんを急に失ったこと、美弥が遠くへ行ったこと、なれない陽と美弥の世話と家事をでほぼうつ状態になっていた。三人で孤児院に行くことも考えたけど、父さん達の貯金が三人が大学までいって生活できるぐらいあったから行かない事を選択した。


「なあ、優。俺達も何か手伝うぞ。」


「ありがとう。」


悠二と沙羅はよく俺の手伝いをしてくれた。家事をしてくれたり、陽と綾香の面倒を見てくれたり凄く助かっていた。しかし、それでも俺の疲れは取れていなかったみたいだった。そんな俺を見兼ねた悠二が俺に聞いてくれた。


「優、大丈夫か?」


「大丈夫だよ。」


「本当か?…っておい!優、めちゃくちゃ隈がでてるぞ!体も痩せ細ってるし…。一日何時間寝てるんだよ?」


「4時間ぐらい?」


「めちゃくちゃ短い!今にも倒れそうだぞ、お前。ほら、一回ベッドにいきな?後のことは俺と沙羅でやるから。」


「…大丈夫だっていってるだろ?」


「大丈夫な訳あるか!絶対に休んでもらうぞ!」


あの時の俺は正気じゃなかった。悠二がベッドに俺を連れて行ってくれようと手を引っ張ってくれていたのに…。俺はその手を振りほどいて言った。…いや、言ってしまった。


「…さい、うるさいうるさい!あっちいけよ!ほっといてくれ!俺一人で出来るから!お前がいる方がよっぽど…。」


俺は言葉につまずいた時、ハッとなった。やばい、やってしまった、と。その時の悠二の顔は今でも忘れられない。少し悲しそうな色んな感情が混ざった様な顔だ。


「…分かった。俺がいるほうが足手まといになるんだな?今まで足手まといになってて悪かった。俺はこれからは関わらないようにする…。」


「っ…!…。」


謝罪をして去っていく悠二を俺はただ見ていた。

…いや見てることしかできなかった。


この日から悠二は俺のところに来なくなり、喋ることも無くなった。学校が同じになった今でも話さなくなった。

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