第29話 クロイバラミツバチとの戦闘(あとボス登場)

 僕たちはクロイバラミツバチの巢の近くで身を潜めていた。

 虫の羽音が大きく聞こえてくる。近くにいるからとかではなく単純にでかいからだ。


「だが、どうやってあの巢を落とすんだ?結構高いところにあるぞ…。」

「そこはワークさんの短剣で大樹ごと切ってほしいッス。」


 と言ってレオナさんは僕に視線を向けた。


「あのサファイアドレイクを斬れるんスからあの大樹なんか余裕ッスよ!」


 いや…できなくもないんだけど問題は……


「あの蜂の大群の中にワークを放り込むのか?大樹に着くどころか五体満足に戻ってこれるかもあやしいぞ。」


 そう、それですよ!よかった言ってくれた…。さすがナーバさん!


「それは自分に考えがあるッス。」


 そう言ってレオナさんはリュックから1つの瓶を取り出した。


「あいつらは音と光に過敏に反応する習性があるッス。この小瓶には光音石こうおんせきと火薬が入ってるッスから周囲に爆音を鳴らすことができるッス。」


 レオナさんは僕たちに作戦を伝えた。


「自分がこの薬瓶を投げてクロイバラミツバチたちの注意を引き付けておくッス。その間にワークさんはあの樹に近づいてあの樹を切り倒してほしいッス。ナーバは群れからはぐれたやつがワークさんに攻撃しないようにカバーしてほしいッス。」

「だから、呼び捨てはー」

「じゃあよろしくッス!」


 そう言ってレオナさんはクロイバラミツバチの巢から少し離れたところに向かって小瓶を思い切り投げた。

 小瓶が地面に当たるとヒビが入り、その瞬間に大きな爆音が周囲に響き渡る。その音は風を生み、僕たちの髪をなびかせるほどだった。


 なんちゅう威力だよ…。


 その音に反応したクロイバラミツバチたちは一斉に音のした場所へと向かっていく。


「今ッス!」


 そのタイミングを見計らい、レオナさんは僕たちに合図した。


「ったく、俺たちをこき使いやがって…。まぁいい。いくぞ!」

「はい!」


 そして僕とナーバさんは巢に向かって全力で走った。

 1匹のクロイバラミツバチが僕たちに気づいて襲いかかる。


「おらぁ!」


 それに反応してナーバさんが剣で受け止め、クロイバラミツバチの身体に突き刺した。

 数匹ほど音のした場所に行かなかったようで次々に襲いかかる。


「いけ!ワーク!」


 ナーバさんに言われ、僕も負けじと応戦した。


「"見真似ペースト発動!"【ファイア】!」


 放った火の玉がクロイバラミツバチたちを包み込む。


『クリティカルヒット!』


 金属同士が擦れるような悲鳴をあげてクロイバラミツバチたちは苦しみやがて地面に落ちた。


 そうして僕たちは戦いながら大樹に向かって走る。

 大樹には巢を守っている2匹のクロイバラミツバチがいて僕たちに気づいて素早い動きで針を突き刺して来た。


「危なっ!」


 僕は間一髪で避け、クロイバラミツバチに短剣を振り下ろした。


『クリティカルヒット!』


 クロイバラミツバチの身体は上半身と下半身に分かれた。


「やっぱすげえなワークは…。俺もいいところ見せないとな!」


 ナーバさんはそう言ってクロイバラミツバチの針攻撃を難なく躱して頭に剣を突き刺した。しばらく抵抗していたクロイバラミツバチだったがやがて動かなくなった。


 よし、あとは…。


 巢を守っていたクロイバラミツバチを倒した僕は短剣で大樹を一閃した。


『クリティカルヒット!』


 大樹に亀裂が入り、ミシミシと音を立てて傾き始めた。

 音の場所に寄っていったクロイバラミツバチたちは倒れる大樹を見て焦りだし、大樹に戻り始める。だが、どうすることもできず、ただ倒れていく樹の周りを行ったり来たりするだけだった。


「…なぁワーク…。」


 倒れる大樹を見ながらナーバさんが呟いた。


「これ、俺たちの方にも倒れて来てないか?」


 ………。

 やっべ…倒れる先のことまで考えてなかった…。


「逃げろぉぉ!」


 ナーバさんの言葉で僕とナーバさんは退避した。

 そして大きな音とともに大樹は倒れ、クロイバラミツバチも数匹下敷きになった。

 目の前にはクロイバラミツバチの巢がある。


「やった!これで目標達成ですねレオナさー」


 大樹も倒れ、巢の蜜が採れる位置まで来た僕は巢の近くまで行こうとしたがレオナさんが手を前に出し、僕を制した。


「いや…まだッス…。」


 と呟き、僕を制止させて巢の様子を伺っていた。


 えっまだ何かあるの…?


 すると倒れた巢がモゾモゾと動きだし、何か大きなものが姿を現した。それはクロイバラミツバチより巨大で背中に生えている刺は螺旋を形成し、まるで花が蜂に巻きついているかのようだった。


黒薔薇纏いし蜂の女帝ブラックローズエンプレスッス…。ローヤルゼリーはあれの体内に入ってるッス…。」


 えっと…今からあの化け物みたいにデカイ蜂倒すの?


「おいおい…。いくらなんでもでかくないか…?それにここにいるクロイバラミツバチといい、こいつといい、変異種アノーマってのはこんなに大きくなるもんなのか…。」

「こんだけ大きいなら大量のローヤルゼリーが手にはいるはずッス!さぁワークさん、ナーバ、やるッスよ!」


 ナーバさんの質問に答えず、レオナさんは黒薔薇纏いし蜂の女帝ブラックローズエンプレスを見て、眼を輝かせていた。


「おいおい…。人の話を聞けよ...。あと呼び捨てはー」

「さぁ、いくッスよ!」


 レオナさんは聞く耳を持たず、黒薔薇纏いし蜂の女帝ブラックローズエンプレスに向かって走って行った。


「おい!勝手に突き進むな!」


 ナーバさんはレオナさんを追いかけて行った。


 はぁ…帰りたい。


 僕は肩をおとしてレオナさんとナーバさんのあとを追った。



 ーーーーーーーーー

 ◯黒薔薇纏いし蜂の女帝ブラックローズエンプレス

 クロイバラミツバチの女王蜂で腹の中にたくさんのローヤルゼリーが詰まっている。強靭な顎と岩をも貫通する大きな針を持つ。背中にある花のような大きな刺のせいで飛ぶことはできないが他のクロイバラミツバチにはない俊敏さを持っている。

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