最終章 2
2
本当はあの時からどこかで気付いていた事だ。
でもその時の私は恋愛アンチで、自分がそんな気持ちを抱く訳ない、心臓が高鳴るのは慣れもしない運動の代償で、静に顔が赤くなってるのを指摘されたのだってただ暑いからだと自分に言い訳した。
あいつのお見舞いをしたのだって、佐藤に話を聞いて興味を持ったからと言い訳して、敵と言ったのだって静を応援しなかったからじゃない。
多分ただの照れ隠しで。
そうやって言い訳を繰り返して、私は自分の気持ちに気付いてるつもりになっていた。
でもそれは本当の自分の気持ちじゃなかった。
だって、伝えたい言葉も、想いも、今はちゃんとある。
分かるんだ。
「私、気付いたの。
今まで自分で決めたルールをずっと言い訳にして、分からないふりしてた。
本当はずっと分かってたのに、自分にも、静にも遠慮してた。」
そんな私の独白を、中川は黙って聞いている。
「失礼だよね。
そんなの。
静にも自分にも。
でも、もう遠慮なんかしたくない。
ルールなんかに縛られたくない…!
私、あんたの事が好き。」
「っ…!?」
私の告白に確かな動揺を見せる中川。
やっと、言えた。
本当の気持ち。
ずっと言い訳して押し込んでいた本当の気持ち。
後は答えを聞くだけ。
こんなに怖いんだ。
今になって勇気を出して告白した静の気持ちが分かった。
時間がゆっくりと流れる。
早く答えを聞きたい。
でも怖い。
不安が私の心を包む。
と、そこで中川はしばらく無言で考えた後にため息を吐く。
コイツらしい。
駄目、だったのかな。
涙が出そうになる。
でも堪えた。
今泣いちゃ駄目だ。
静だって頑張ったのに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます