第30話 練習練習!

サーブを打つ前に軽く地面にボールを叩きつける。これをしている時は何も考えなくてもいいからこの時間は好きだな〜1分くらいたっぷり使ってから、ボール拾いが取りやすい回転と高さになるようにコントロールして打つ。これが結構難しい、みんな複数のボールを見てるから動いちゃうんだよね。ある程度打って肩があったまってきたところで隣を見る


そこには血気迫る表情でネットを睨みつける智がいた。怖いよ〜もう少し不真面目になってもいいんじゃない…?ととまずいまずいこれ以上休んでると蓮に怒られる!!そっちの方向からボールが飛んできそうなくらい冷ややかな視線が僕に突き刺さってるし!!


「周りを見るのもキャプテンの仕事だし…」


「練習に参加することも仕事だぞ」


「ハイガンバリマス」


よーし気持ちを切り替えてサーブするぞ~!決して蓮が怖い訳じゃないからね…!本当だからね…!

まぁふざけるのもここまでにして真面目に取り組もう。もうそろそろ5分が来るし、ジャンプの準備をする。僕には黄金ほどのメンタルは無いけれど、実力は1番だからね!それくらいしか誇れないし


ピピピピピピ


ラスト5分の音が鳴る。ギアを一気にあげよう、本番はこんなに時間をかけて調整することは出来ないからね


最初のサーブで最高点を叩き出す。1回勝負!


一発目、高く上がったボールに合わせて飛ぶ。自分の出せる最高点で叩いたボールは狙ったところからボール一個分は外れていた。

ボールの投げ具合は正常、目で確認した高さにも以上はなかった…ということは…


「僕の到達点が下がってるってことだ。ハハ…」


さすがの僕も少し疲労が出てきてるってことだ。まずいな僕が壊れたら本当に終わる。贔屓にしてくれてるあの人にも悪いし…


「まいっか、多少手を抜いてもバレないだろうし…もしかしたらご飯食べすぎただけかもだし〜」


そんなことよりもう一本!次は力を抜いて無回転で手前に落とす…ネットに引っかかっても別にいい。練習だもんね!

…蓮には僕が外すなんて有り得ないとか言われるんだろうけど


深呼吸してもう一度、今度は少し遅れて飛ぶ。ジャストミート…!僕の狙っていた手前にぽてんと落ちるサーブになった。


ラスト一本、最初にミスった全力サーブをもう一度打ってみよう。上手く行けばそれでいいし、当たる位置が下がっていたらこの後の練習の力の抜き方を考え直そう


「すぅ…ラストォ!」


ラストの掛け声に混じって声を出す。間違っても他の人のボールに当たらないように、少し待ってから投げる。

さっきよりも力を込めて飛ぶ。……手のひらの3分の1しか当たってないな。ボールは見当違いの場所へ飛んでいき運良くインになった


「ラッキー奇跡の女神様はこういうところも見てるんだねぇ」


「何の話だ?さっきからブツブツと呟いていたが…何か違和感でも?」


顎に手を当てながら考え込んでいると蓮が話しかけてきた。どうやら先程から渋い顔をしていた僕を心配して来てくれたみたいだ。


心配してくれるのは嬉しいけど…今の不調の可能性を蓮に行ったら強制的に休まされそうなんだよな…話さない方がいいな


「やっぱり本番のドキドキ感が欲しいなって思ってただけ〜蓮は?どうだった?」


「俺か?俺も特に変わったところは無いな。大事をとって飛んでは無いが…まぁ大丈夫だろう」


「そう、無理しないでねーで?次はなんだっけ」


「やっぱり聞いてなかったんだな…」


「か、確認だよぉ。あはは…」


「はぁ次はスパイク練だ。そろそろ犬猫を呼んでこないとな」


僕は蓮の言葉ににんまりと笑って答える


「いらないでしょ、どうせすぐ来るよ!」


後ろの扉が開く音がする。やっと来たと思いながら振り向けばそこには汗だくの犬猫コンビがいた。二人はそのまま監督の元へ走っていき礼をしてからこちらに来た。そして僕に向かって話し始めた


「軽い準備運動と外周してから来た!そろそろスパイクの時間だと思ってよ」


「だいせーかい。ネコは対人挟む?」


「い…らないかな。スパイク練中に何とかする」


その言葉に頷きながら考える。最初は軽く打ってネコの調子を見てみるのもいいかもしれない。みんなのレシーブ力を信用していないわけじゃないけど、ネコに怪我されたらどうしようもないからね。剛は怪我しないで有名だし大丈夫か!


「わかったー無理だけはしないでね!無理してたら止めるからね!蓮が!」


「俺か、まぁ予想はしてたが…」


「僕は気づけないからね~」


「お!そろそろ始まんな!行こーぜ」


根津さんの号令を合図に片側に集まる。最初はポジションに分かれないで打つ。智がトスを上げてくれているけど、植木のセッターのトスでも打ってみたいな。な~んて考えていたらいつの間にか僕の番だ。智の調子がどうなのかは見てないし高さは変えずに腕の力は最小限で…打てば…


バシッ


「おぉ~完全復活だね智」


「ありがとうございます。聖様は…」


「練習だから大丈夫!」


多分僕が力を抜いてたから心配してくれたのかな?でも練習から本気でやると僕の体が壊れちゃうんだよ~智~わかってくれ~


「ほら!次の人!」


僕は、ネコが柔らかく返してくれたボールを受け取ってボールかごに入れた。心配そうな顔で見てくる智を笑顔で見つめ返した。これをやると僕のチームメイトは大体目をそらして頷いてくれるから楽なんだよね。ほら


「…はぁわかりました。あなたを信じましょう」


「はぁ…」


並んでいた蓮のほうからため息が聞こえるのを無視して、少し急ぎ目に列に並びなおす。たいして力の入っていないしネコの正面に落としたスパイクに納得がいってないのだろう。ネット越しの視線がかなり怖かった。後ろにいるときは頼りになるのに正面にいると思わず目をそむけたくなるほど鋭い視線が飛んでくる。


両手で手を合わせ顔の前に持っていきながらぺこぺこする。これで許してぇ


スパイクを打ち終わった蓮のほうから、もういちどため息が聞こえてきた気がする。



終わりに

お久しぶりです。熱から解放されたと思ったら、パソコンが死に。先日パソコンが返ってきました。ここからはのんびり更新を続けていこうと思ってます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る