エピローグ

『その後も彼らの物語は続く。


 でも、数奇すうきな人生を歩んできた彼らなら、何があっても笑顔で乗り越えるでしょう。


 異星から持ってきた武器で魔物を殲滅せんめつしたり。


 エルフの国の王に土下座をしに行く元勇者がいたり。


 二度と他の星から侵略されない様に、その星の運命をいじる女神がいたり。


 ゼウスによって獣人やエルフが住んでいる星の管轄かんかつになり、喜ぶ新米の神がいたり。


 それらを記すのはまたの機会にしよう』


                  おしまい



――――――――――――――――――――――



 神界にて。

 筆を手に取り、頭を悩ませる神がいた。


 ◇


 コンコン、と部屋がノックされる。


「やっと来たか、入っていいぞ」


「おーいオベイ、なんかイシスの奴が泣いてたけど何か知ってるか?」


「あぁ、俺がいきなり上司になったからな……」


 俺は握りしめていた筆を机に置くと、すっかり冷めてしまったコーヒーの入ったカップを口に運ぶ。


「あー、それでか。でも、転生魔法も運命操作もお前の方が優れているし、妥当だよな。神になった今だから分かるけど、半分人間だった状態でイシスの運命操作を上回る魔法を使えたお前はやっぱり化け物だよ」


「ふん。そんな事より、リリィは元気なのか? たまに様子を見ているんだろ?」


「あぁ、子供達と仲良く暮らしているよ。魔物もいないし宇宙人に侵略される心配もない。戦争なんかが起きたら俺が止めに行ってやる」


「過度な人間への干渉は、神界規定で禁止されているだろ」


「時空を弄って証拠隠滅しょうこいんめつすればバレないさ」


「悪い神め」


 流石に冗談か?

 いや、コイツならやりかねないな。

 俺も人の事は言えないが。


「ところで、俺はなんで呼ばれたんだ?」


「あぁ、俺達がいた二つの世界にちょっとした伝記を残そうかなと思って。アイツも呼んでおいたから、これから三人で書いていこうぜ」


「アイツも呼んだのか、わざわざ自分が負けた出来事を書かせるのかよ……ところで、タイトルは?」


「まだ決めてなかったな……そうだな」


 これにしよう。

 平凡で何の捻りもないタイトル。

 でもこれがやっぱり、俺達には一番しっくりくるな。


「『仕方がないので転生しました』」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る