聖戦記
桂木 京
序章:聖王の眠り
豪華絢爛な王城の、赤い絨毯の謁見の間にて。
大陸を治めていた、聖王・ジークハルトの胸には、深々と漆黒の槍が突き立てらていた。
聖王の手には、中央から一文字に折られた大剣。戦いの最中で折られたのであろうそれは、聖王の証としての荘厳な影は無かった。
「……他愛もない。」
聖王から槍を引き抜いたのは、若い黒騎士。その鎧は所々欠け、剣戟の激しさを物語っていたが、黒騎士は、怪我を負ってはいなかった。
兜を脱ぐ。
銀髪の、端正な顔立ち。歳は30代前後であろう。その瞳は鋭く、力尽きた聖王を射抜くように一瞥する。
「愚かな。早々にその座を譲っていれば、死以外の選択肢があったものを……」
それでも、聖王としての信念を曲げずに戦い抜いた男に敬意を表し、胸に手を当て一礼する。
「来世は……戦いの無い世に生きよ……」
聖王の亡骸を背に、黒騎士は歩き出す。
表情ひとつ、変えずに。
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