第16話 真実の断片

リナとハンクは隠されたデータを見つけた興奮が冷めやらぬまま、その情報の収集に取り掛かった。リナはディスプレイに映し出されたデータを見つめ、指を動かして次々と情報を引き出していく。


「これが手がかりになるはずだ」とリナは自分に言い聞かせ、必死にデータを収集し続けた。


深層データベースへのアクセスには制限があり、彼らには限られた時間しか残されていなかった。さらに、リナは自分の記憶が日が暮れると消えてしまうことに対する焦りを感じていた。


「急がないと…」リナは時計を見つめながらつぶやいた。「もう時間がない…」


ハンクも同じく焦燥感に駆られていた。彼はリナの背後でデータの整理を手伝いながら、「リナ、あと30分しかないぞ。この時間内にできるだけ多くの情報を集めよう」と声をかけた。


リナは頷き、さらに集中してデータを収集した。彼女は関連する情報を一つ一つ丁寧に確認しながらも、時間のプレッシャーに追われていた。


「ここにある情報、全部取っておかないと…」リナは自分に言い聞かせ、手を止めることなく作業を続けた。


データの量は膨大で、どれが重要な手がかりになるのか分からない。リナはその中から有用な情報を選び出すために、全てのデータを収集することを決意した。


「ハンク、この部分も重要かもしれない」とリナはスクリーンを指差し、特定のデータに注目した。「ここには私の記憶に関する情報が隠されている気がする…」


ハンクはリナの指示に従い、そのデータを解析する準備を整えた。しかし、深層での作業時間は刻一刻と迫っていた。


「あと10分しかない…」ハンクは時計を確認し、リナに急ぐよう促した。「リナ、もう少しだ。頑張れ!」


リナは全力でデータを収集し続け、最後の一秒まで情報を取り出すことに集中した。彼女は自分の焦りと不安を押し殺し、ただひたすらに作業を続けた。


「これで全部か…?」リナは息を切らしながら、最後のデータを確認した。


「そうだ、これで全部だ」ハンクはリナの手からディスプレイを受け取り、データを保存した。「リナ、よくやった。」


リナは深い息をつき、少しだけ安心した。「でも、まだ解析はできていない…」


ハンクはリナを見つめ、「そうだが、まずは情報を集めることが第一歩だ。これだけのデータがあれば、次のステップに進めるだろう」と励ました。


リナはハンクの言葉に力を得て、「ありがとう、ハンク。これで少しは前進できた気がする」と感謝の意を示した。


こうしてリナとハンクは、限られた時間の中で手に入れた膨大なデータを持ち帰り、次なる調査に向けて準備を整えた。彼らの前に待ち受ける真実の断片は、まだ霧の中に隠されているが、その一歩を踏み出すことができたのは確かだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る