第4話 記憶の違和感に戸惑うリナ

リナ・アラカワは深い決意を持ってオフィスを後にし、帰路についた。その心には、記憶ストレージのシステムエラーについての調査がまだ始まったばかりだという認識と、その調査が自分のキャリアにどれほどの影響を及ぼすかという思いが交錯していた。彼女は一度自宅に戻り、夜のうちに記憶の消失に関するメモを残すことに決めた。


自宅に着くと、リナはすぐに机の前に座り、記憶消失の問題を詳細に記録することに決めた。メモ帳を取り出し、これまでの調査内容や感じた違和感を丁寧に書き留めていく。エラー内容、記憶の消失がどのように発生したか、そしてこれからの調査の方針についても明確に記載した。これで翌朝には新たな情報を元に、さらに深く調査を進めることができるだろうと考えていた。


「これで何か手がかりがつかめるかもしれない。」リナはつぶやきながら、メモ帳を机の引き出しにしまい込んだ。その後、リナは早めに床に就いた。


翌朝、目を覚ましたリナは、いつものルーチンで出勤の準備を始めた。朝食を終え、机に戻ってメモを確認しようと引き出しを開けると、そこには昨晩書いたメモ帳がちゃんと置いてあった。しかし、リナがメモ帳を開いた瞬間、自分がメモを残した記憶が全く思い出せないことに気づいた。


「これって一体…?」リナは混乱しながら、メモ帳を手に取った。メモの内容そのものには問題がない。詳細に記載された調査内容やエラーの情報がそのまま残っている。しかし、リナ自身がそのメモを書いたという記憶が全くないのだ。まるでその時間帯が完全に欠落しているかのようだった。


リナはメモに目を通し、どうして自分がこのメモを書いたのか、どのような思いで書いたのかを思い出そうと試みたが、その記憶は全く浮かんでこない。彼女の脳裏には、その夜の出来事がまるで霧の中に消えてしまったようにぼんやりとしているだけだった。


「これじゃ、どうやって調査を続ければいいの?」リナはメモ帳を机に置き、頭を抱えた。記憶が抜け落ちているという事実が、自分だけでなく他の人々にも影響を及ぼす可能性があるのではないかという不安が心に広がっていった。


リナは再びオフィスに向かい、問題の調査を続けることを決意した。メモの内容そのものは残っているが、その背後にある思考や感情が欠如していることが、彼女にとってどれほどの意味を持つのかを深く考え始めていた。記憶の消失が単なる偶然ではなく、システム全体に広がる問題である可能性が高いことを実感し、彼女の決意はますます固くなった。


「もしこれがシステム全体に影響を及ぼしているのなら…」リナは心の中で考えながら、次のステップをどうするかを真剣に考え始めた。彼女は真実に辿り着くための努力を惜しまない覚悟を決めたのだった。

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