深き泥より咲き誇る花々の行き方を想う。

荒れ狂う川の神を治める為、と或る盲目の
娘が『柱』とされる。全てを諦観して死を
受け入れる彼女。そして死の呪いに塗れた
もう一人の『彼女』は、只々頭上の曇天を
人の醜さ淺ましさを憂う。
 先触れを識る娘とその妹は、来るべき
災厄を恐れるが、未来は定めであり不動の
ものである。それは生きている間の心の
枷となる。
 この物語は、決して一つではない。
幾つもの物語が交差して重なりすれ違う。

作者の書かれてきた物語の数々は、とても
美しく潔い。蒼黒い天空に流れる一筋の
天狗星、草原を疾走する虫たちの騒めき。
精緻な言霊は目の前にあるものだけでなく
心の機微をも見事に描き出す。


  多くの人々に読まれて欲しいと
         心から想う。