第129話
小雨も降り出してきたが、強行軍のお陰もあって日も落ちて暫くした頃には『ビレッジアップ』に到着出来た。本降りになる前に着けて良かった。逗留期間は宿屋『サモン
「お風呂が有るんですね」
「職人は仕事柄汚れるし、髭の手入れもあるからな。小さな町でも公衆浴場の一つ二つは有る。ちょっと大きな街なら宿の周辺にもあるから旅もしやすい。場所によって湯船がある風呂屋だったりサウナのある風呂屋だったりと仕様も違ったりする。個人宅の場合、鍛冶師や農業ドワーフ宅だと水浴び場があったりもするが」
やはりというか水質浄化にはスライムが使われていた。赤スライムと緑スライムに水をザックリと浄化してもらった後、『汎用魔法』や光魔法や聖魔法の『浄化』で浄化する。魔法オンリーで浄化してもいいけど、先にスライム処理をしておくと少ない魔力で大量の水を浄化出来るので効率的なのだという。水のみを浄化するスライムは居ないけど、複合使いをすれば問題ないのだとか。
ドワーフの住居は石作りが中心。時に煉瓦作りだったりもするが。ワザと隙間を残す様に建てているので換気に関してはバッチリ。悪く言うとすきま風が少々吹き込む。酸欠防止の構造なので仕方ないのだ。ヒト族はすきま風を嫌って可能な限り室内を密閉しようとするので死亡事故が絶えないらしい。
すきま風が入る家に住んでいてもドワーフは先祖が坑道や洞窟といった閉鎖空間に長くいたという記憶が有るせいなのか、本能的に換気を優先してしまう。つい窓を少しだけ開けたり、スキルで空気の流れを確認したりとかを無意識にしてしまうのだ。その為、ヒト族と同室だと諍いが起きやすいので注意!!
部屋に荷物を下ろし部屋着に着替える。そして着ていた服や靴に『汎用魔法』
宿屋から公衆浴場の入湯札を貰って汗と埃を流してくることにした。浴場は男女別なので上がり時間を決めて入る事になった。風呂の後は宿に戻って酒盛…いや、晩飯だな。まぁ少しは飲むんだろうけどね……温〜いエールを。小雨降る中、外風呂に行くのは少し面倒ではあるが傘も借りたことだし、いざ浴場へ!!
公衆浴場の看板娘に入湯札を渡し湯浴み着を受け取る。女性用はワンピースタイプで男性用は腰巻きタイプ。入浴ルールは脱衣所に書いてあるのでそれに従う。浴槽は二つある。洗い場で先ず “ 下の湯 ” を湯桶で汲み全身に掛けて汚れを落としてから “ 下の湯 ” に浸かり、 “ 上の湯 ” に浸かって暖まってから上がるのが入浴ルール。締めに “ 整い水 ” を被るのは好き好きで。石鹸は無いものの “ 下の湯 ” には汚れを落とす成分が含まれているらしく、汚れも落ちるしお肌がスベスベになるんだとか。前世の温泉のアルカリ単純泉みたいな感じか?
魔法やスキルでも浄化はできるけど、やっぱりお湯に浸かるのは格別です。
そして、入浴ルールの注意書きにお酒を飲みながら入浴するのは止めましょうとあった。どうやら、前世の日本人もドワーフも考えることは一緒らしい。
疲労もあってか久々の湯船でリラックスしてしまった俺はそのまま………
{ ――― チョイナ チョイナ ――― }
{ ―――
………………!?
{ ――― チョイナ チョイナ ――― }
ゴボッ…… ゴボ ズズッ!! 鼻に水入った!!!! めっちゃ痛い!!
あっ、あぶねーーーー!!!! 久々の湯船で落ちかけた。脳内に響く謎の声に助けられたよ。折角、『関所の集落(仮)』から出てきたのに『ビレッジアップ』じゃなくて天国に到着するところだった。危なく白い空間に舞い戻りそうになったよ。上位存在さん、AIさん、謎の声さん、お酒の神様、研磨の神様、等々………ありがとうございます。鼻の奥が痛いのは名誉の負傷ということで。
それから宿に戻って、皆と無事に到着したのを祝う打ち上げと言う名の晩飯になった。明日の予定を確認。俺は特に予定なしと言うことだったので一日中寝ていてもよし、鉱石研摩をしていてもよし…か。ポニー達を返却するのに付いて行って、その後は宿屋で砂利鉱石の研摩祭りかな。大体お金を持ってないから買い物に行かれないんだよな。そして気になるトマトの追熟確認だけど、俺が風呂で溺れかけてる裏でホーク=エーツさんが商業組合『ビレッジアップ』支部に提出し終わっていた。
――――――――――
(作者注)
寒い時期に起きがちなヒートショックとかではなく、以前、単に湯船で寝ちゃって目が覚めたら水風呂に浸かっていた…のを思い出して書いた話です。ミーシャ的には緊張も解け久々のお湯のお風呂でリラックスして眠気が襲ったと言うことです。多分、風呂でなくても寝落ちるやつです。
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