第73話

から茄子】に挽き肉ダネを詰めたものをフライパンで焼き始めることにした。猪骨で出汁を取っていたファイン=ロックさんが皆を呼びに向かう。広場に現れたのはマリイン=リッジさんとジョー=エーツさん。大小だいしょう、二人の鍛冶師は「少し遅れて行く」とのこと。(道具の)トング的な理由だな、きっと。


樹樹じゅじゅ菜】の舟盛り焼きを竈に入れて焼き始めたら、ジョー=エーツさんが「飲むぞー!!」と叫ぶ。流石に酒には抗えず?竈の前に全員集合。揃ったところで宴会が始まる。



「で、今日はここの畑に生っている野菜を使った料理で飲むんだよな」


「はい。先ずは【から茄子】の肉詰め焼きです。ジョー=エーツさんが獲ってきてくれた猪肉を【バーサーカッター】で挽き肉にして詰めて焼きました。焼けたらそのまま食べても、【あか茄子】のソースを付けて食べてもいいです」


焼けた【から茄子】の肉詰めは土魔法『土器』で作った大振りの陶板に乗せ、炭火で何となく保温しておく。借りた火ばさみが役立ってるよ。小鍋に入ったケチャップ的な【あか茄子】ソースも置く。


「火ばさみで炭や金属以外を掴む奴が居た」


「俺、炭火に突っ込んで焼いた【茄子花芋】なら掴んだ事があるぞ」


やっぱりトング的な物の需要が無かったんだ。まぁ俺だって前世では菜箸で済ませたりしちゃってたから人のことは言えないけど。



「次は【樹樹じゅじゅ菜】の舟盛り焼きです。茹でた【樹樹じゅじゅ菜】に岩塩とオイルを掛けて竈の中で焼いただけです」


焼き上がった舟盛り焼きは、肉詰めの乗った陶板の脇に置く。



「次は、茹で【樹樹じゅじゅ菜】のツリーです。中身はマッシュ【茄子花芋】です」


三角錐に盛り付けたマッシュポテトに茹でて小房に分けたブロッコリーを刺してツリー状にした物を出す。前世でならクリスマスに作って出せばウケたんだろうけどね。


「そしてこれが、茹で【樹樹じゅじゅ菜】の一本造りです!! マッシュ【茄子花芋】の上に突き刺しまーす!! 花は【食用マンドラゴラ】で作りました」


ブッ…!! と吹き出す声が聞こえる。俺だって前世でTVで見た時に変な声あげたもんなぁ…(苦笑)


「わあ、花咲く草原のシンボルツリーだよ【樹樹じゅじゅ菜】料理は針葉樹にも広葉樹にも表現出来るんだね」


マリイン=リッジさんが上手く表現してくれた。ありがとうございます。


「取り敢えず、料理はこんなところだな。皆にエールは渡ったな。いくぜ、乾杯ー!!」


「乾杯!!」 「イエーイ!!」 「ヒャッホーイ!!」


皆、飲む、飲む。飲みながら肉詰めを頬張る。


「【から茄子】の肉詰めは無限に食えそうだな」


「そのままでも凄く美味しいけど、【あか茄子】ソースを付けたらもっと美味しい」


「儂は【樹樹じゅじゅ菜】を見直したわい。舟盛り焼きにマッシュ【茄子花芋】を付けても美味いのぅ」


「ツリーも焼くか!!」


焼かれる【樹樹じゅじゅ菜】ツリー。そしてスルーされる一本造り。



「そしてお酒のアレンジです。【あか茄子】を使います」


そう言いながら、ヘタを除き皮を湯剥きした【あか茄子】を取り出す。


「この【あか茄子】を【バーサーカッター】でジュースにします。出来上がった【あか茄子】ジュースをエールで割って飲みます」


勿論、よく冷えたエールで割るよ。この半月ちょいでエールは冷やして飲むのが『関所の集落(仮)』の定番になってしまった。





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