第23話

    ――――――― 今回はパイク=ラック視点の話です ――――――



ジョー=エーツの指示で放浪ドワーフ娘のミーシャを『渓流鰮』獲りに連れ出した。集落での会議の内容をを聞かれない為だが、それに追加で不審な行為がないか観察するという目的もあった。聞くところによると氏族名すら不明で不憫な生い立ちの様なのだが、それにしても妙な生活力というかスキルや魔法の使い方をしているのだとジョー=エーツが語っておった。


確かに知られていない芋料理を振る舞ってみたり、道すがら見つけた木の実、草の実を『対物簡易鑑定』したり何らかの『汎用魔法』を掛けたりしていた。ミーシャ自体は回復魔法やスキルを持っていないので、自衛の為に鑑定したり『汎用魔法』で処理したりするのは間違った行為ではないが、普通のドワーフはそんな事はやらぬな。


そして、辺境出身という割に何故か儂の持っていた魚醤にやけに食い付いてきた。初めて見た調味料を使いこなすなど常識的に考えてありえないではないか。


まぁ、儂の木工スキルや秘匿魔法を目の当たりにした時の目の輝きは、新しい技術に触れたドワーフならではだったがのぅ。


しかしだ、髭の生え揃ったばかりの小娘がだ、どんなドワーフに育てられたか知らぬが、何故、儂らの知らぬ料理や道具の知識を有しておる?大都市育ちならまだしも辺境出身の小娘じゃぞ。濡れた革靴に何かの『汎用魔法』を使って乾かしておった。地味で生活に則した魔法が中心の『汎用魔法』を不思議な使い方で使いこなす者など見たことがない。『汎用魔法』なんぞ『着火』と『飲水』、後はせいぜい『蛍火』で暗い場所をほんのり照らす程度の使われ方じゃ。それこそ、ミーシャの様な『汎用魔法』の使い方が広まれば魔力に乏しいドワーフでも効果的に魔法が使用できる。それもだ、冒険者稼業よりも生産作業に役立ちそうではないか。



そうそう、ミーシャの報告がまだあった。漁の傍ら、河原で石を拾っておったのぅ。パッと見で、水晶や黒曜石、琥珀あたりか。得に鑑定を掛けるでもなく的確に拾い集めていたから、無価値な石を弾く選眼力はある様じゃな。というか、鉱石類の目利きが出来るのか、石にだけ鑑定を掛けていなかったというのが正しいな。宝石として価値が高くはないものの磨けば価値の出る物が好きなのは当にドワーフらしい。


…なんじゃがのぅ、拾った石の中に二つほど魔力の抜けた魔石があったんじゃよ。当のミーシャは魔石だとは気付いてなかった様じゃが。あんなD級品の魔力抜け魔石を嬉々として拾い集めたのは何故じゃ!?まさか魔石を知らぬとは言わないじゃろうな?ジョー=エーツの困り顔が目に浮かぶわい。

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