おっさん聖女!目指せ夢のスローライフ〜聖女召喚のミスで一緒に来たおっさんが更なるミスで本当の聖女になってしまった

ありあんと

異世界に呼ばれた聖女

第1話 プロローグ

「おお!この方が聖女か!

 ささ、聖女様お手をどうぞ!」


 この国の第一王子が、座り込んだ長い黒髪の小柄な少女に近づいていきます。

 黒髪に黒い瞳。アーモンドの様な大きな瞳が特徴的な可愛らしい少女ですね。

 顔立ちは東の民に似ている気がします。


 肌の露出が少し多めな服を着ているのも同じなのですね。

 肘や膝下が露出してます。あ、王子が気を利かせたのか、マントを掛けて肌が衆目に晒されないようにしてあげました。

 常々ボンクラでは無いかと疑ってましたが、これは高ポイント付けてあげないとですね。

 

 それにしても彼女が、本当の本当に伝説の聖女様……なのですね。

 とっても愛らしい方です。


 そして……なんか床にヘタレている男性は何でしょう?

 聖女様が丁重に第一王子にエスコートされていく中、ポカンとちょっと間抜けな表情で座り込んだ男性がいます。

 聖女様と同じ黒目の黒髪。年頃は……二十代でしょうかね。

 東の民の方々は見慣れないので正確な年齢は私には分かりませんが、私よりは年上でしょう。多分。

 近づいて見ないと分かりませんが、着ている服は生地は中々良い物のような感じがします。


 皆、聖女様の降臨に興奮して、互いに自分の意見を声高に言ったり、何とか取り入る算段を立てたり忙しいみたいで、彼に気がついていないか、気がついていても無視を決め込んでるようですね。


 仕方ありませんね……


 下っ端神官の私が、とりあえず彼が何なのか話を聞いてみようではありませんか。


「もし、そこの方、あなたは聖女様のご関係者なのですか?」


「は?」


 男性はポカンと口を開けてこちらをマジマジと見つめて来ます。

 とりあえず立たせた方が良い気がするので、手を差し出すと、私の顔と差し出した手を交互に見合わせました。

 

 ……時を少し遡らせて説明させていただきますね。


 私、下っ端神官ルミィは魔法陣の前で精神を懸命に集中させました。

 

 ドキドキしますね……

 

他の神官とタイミングを合わせて、女神アルマに祈りを捧げつつ、魔法陣に魔力を注いでいきます。

 何度も練習した甲斐があって中々良い感じではないでしょうか?

 私は本番に強いタイプであると自称していますが、これが上手くいったら大いにアピールポイントとして周囲に広める必要が発生しそうです。

 目の前にあるのは、古代魔法の専門家が歳月をかけて何とか再現した、異世界から聖女様を呼び出す魔法陣です。


 この国の瘴気が年々濃くなって来ていることが分かったのは、50年近くも前からの事でした。

 

 神聖魔法の使い手を国中から集め、同盟国にも少なからぬ代償の代わりに人を借り受け、何とか国の形を保って来ていたが、ジリ貧なのは誰の目にも明らかなほどに、瘴気の発生は日増しに増えていったのです。


 そこで、失われた古代魔法から異世界との門を開く召喚魔法の研究が始まり、神聖魔法と古代魔法の素質のある者を集めて……

ついに今日ここにその成果が!って感じです。はい。


 私は神聖魔法と、古代魔法に属する降霊術に適性があった為に、幼い頃より神殿で神の僕として育てられました。

 まあ、生まれにすこーしばかり、あれやこれやのややこしい事情があった為にこれ幸いと捨てられたと表現することも可能です。

 

 しかし、私は両親を恨んでなんていません。ええ、ちっとも。こうして、この世界を統べる唯一の存在女神アルマの聖なる力をその身に宿すお方を召喚する大役に抜擢されたのですから!

 活躍が認められれば、今後の私の神殿での立場も安泰になろうと言うものです。

 おお、女神アルマの慈愛に感謝を!

 

 そして、聖女召喚とあいなった訳なのです。

 これは……成功といっても良いんでしょうか。

 想定外のオマケが来てしまいましたが、別に目的は果たした訳ですし、別に良いんですよね?

 

 それはそれとして、やはり一緒について来ちゃった男性を無視し続ける訳にもいかず、聖女様――サリトゥ・イオーリと仰るらしいです。神秘的な響きのお名前ですね――は王室の宮殿に招かれ、

 男性――トキタ・トキョ?は神殿の男性寮の方に来ることになりました。

 

 トキタは聖女様のお付きの人かと最初は考えられていたのですが、本人達が否定したので、よくわからない人を呼んでしまった責任がある神殿が引き取ることになりました。

 何故トキタがついて来てしまったのかは、現在神官と学者で頑張って調査中です。


 私は、トキタのお世話係になりました。

 中央大神殿の中で一番若い女だからですね。

 と言いますか、女は今二人しかいない上に、もう一人はとても誰かをお世話できる状況に無いのですが。


 あるいは……私に対する嫌がらせなのか。


 では、トキタに挨拶に行くことにしますよ。

 どんな人となりなんですかね。

 従順なら良いんですけど。見た感じはおとなしそうでしたからね。

 見た目通りで頼みますよ。

 おお、私の未来に女神アルマのご加護あれ!

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