第6話 はじめてのものたち

 俺が初めて魔術を成功させてから

数ヶ月経ったある日。

俺はある程度魔力の流れのイメージも自分なりに掴め、火、水、土、雷、治癒の

五種なら特に意識せず素早く使用できるようになって今日から応用編に行こうかと

考えていた。

しかし、父デアル・レントのとある誘いを

受けたことでそれは一旦後回しになった。

「おい、シディ今日は父さんと一緒に

 王都に行こう。もちろん父さんは、

 昼間は仕事中だから 一緒に見て回るのは

 夕方からになるけどな。」

「あら、いいじゃない。シディは頭もいいし

 早めに世間に触れておくのも悪くないわ。」

王都か。確かにそろそろこの世界の発展した

街を見てみたいところではあった。

それに息子想いのシフィリアも肯定的だし

安全面に関しては問題ないだろう。

まあ最悪魔術もあるしな。

「うん!今日は父さんの仕事について

 行ってみるよ。」





王都まではかなり距離があるのではないかと

思っていたが

馬で四、五十分程で着くとのことだった。

せいぜい十キロ、二十キロぐらいだろう。

我が家はてっきり田舎にあるのだと

思っていたが存外そうでもなかったようだ。

まあ、東京でも栄えているところと

そうでないところでは大きな差があるし

そういうものか。

「おいシディ!魔術をずいぶん使えるように

 なったらしいじゃないか。」

馬の走っている雑音混じりにデアルが

話しかける。

「まあね!もう魔力操作も慣れたもんだよ!」

大きなデアルの背中でほぼ防がれて

しまっている俺の声がしっかり耳まで届くよう

大きな声で返した。

「ハハッ!すげーな!」

「母さんが祝ってやろうってさ!ってこれ

 シディに言っちゃダメか!ハッハッハッ!」

もう気づいたかもしれないがこの男かなり

ガサツというか豪快な性格なのだ。

正直言ってシフィリアの方は魔術関連や

母親ということもあり関わりも多いのだが、

この男に関しては衛兵の仕事のせいで家に

あまりいないためよくわからないのだ。

わかることと言えば黒い髪と瞳を持ち、髭や傷があるわけでも特別彫りが深いわけでもないが謎に貫禄のある顔に超人と言っていいほどに

鍛え上げられた肉体を持っている

ということくらいだ。

「さてと、そろそろ王都が見えてきたぞ

 シディ!ほら見てみろ!」

あまりに大きいデアルの体から俺が体を

逸らして顔を覗かせると、そこには皆一度は

憧れてしまうような異世界の街々が

広がっていた。

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