西海正隆は大学で歴史学を専攻する大学生だった。彼は歴史に深い興味を持ち、特に幕末から明治初期にかけての日本の変革期を熱心に研究していた。ある日、正隆は大学の図書館で古い書物を調べていたとき、一冊の風変わりな本に目を奪われた。その本は、時代を超えた神秘的な事件や未解決の謎について記されたものであり、特に一つの章が彼の興味を引いた。

その章は、明治初期に長崎で起こった不可解な失踪事件について書かれていた。その事件は、楠本正隆という名の政治家の周囲で起こったもので、当時の新聞には「神隠し」として報じられていた。正隆は、楠本正隆が自分の先祖であることを知っていたため、その事件に強く惹かれた。

本を読み進めると、事件の詳細が次第に明らかになった。ある日、楠本正隆が重要な政治会議から帰宅する途中、忽然と姿を消した。目撃者は誰一人おらず、手がかりも残されていなかった。ただ、一つだけ奇妙な事実があった。それは、彼が最後に立ち寄ったとされる寺院で、彼の声が夜遅くまで聞こえていたという証言だった。しかし、その寺院は廃墟となっており、誰も住んでいなかった。

正隆は、この謎を解明することが自分の使命だと感じた。彼はすぐに調査を開始し、その寺院を訪れることを決意した。寺院は長崎の郊外にあり、荒れ果てた山の中にひっそりと佇んでいた。正隆は、友人である玲子と一緒に寺院へ向かった。玲子は民俗学を専攻しており、霊的な現象についても詳しかった。