第2話 旅の支度-1
ミトスは城内の自室へと戻った。
旅に持っていく物を選び、少しのお金と食料のみを袋に詰め込む。
「服と食べ物一緒にしちゃったけど、まぁいいか。まさかこの歳になって外国漫遊旅行かぁ。楽しみだなぁ」
いつからかミトスの頭の中では、追放が旅行へと変換され、外国巡りが終わったらエルシアに戻る意識へと変わっていた。
「あっ。これは必需品だ。持っていかなくちゃ」
ミトスの手に持っている物は小さな魔道具。
城の宝庫に長い間眠っていた物で、誕生日祝いに国王より賜った品。
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『ワンタッチ展開式筋トレマシーン』
・ボタン一つで様々な筋トレマシーンへと変わり、片付けも同様。
・持ち主の魔力と筋肉量を計算し自動で最適な
負荷へ調整してくれる。
・展開前は軽量、コンパクトで持ち運びやすい。
略して、ワントレと呼んでいる。
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これが無ければ今の俺はいない。
五百年もの間、これ一つで体を作り上げてきた。
「これからもよろしくな
ポンと手で触れるとなんだか応えてくれた気がした。
さて挨拶周りだ。
知り合いの所へと旅に出かけることを伝えに。
荷物を持って外へと出る。
知り合いは少ないし、ひさびさに会うからどんな顔か忘れかけてるけど、お土産は何が良いか聞かなくちゃいけないな。
城下町へ続く階段を降りていく。
今日も良い天気だ。雲よりも上空にあるし、天空樹から発生するドーム状の膜があるからずっと晴れなんだけどね。
しばらく歩くと、知り合いの家へと着いた。
コンコンと扉をノックすると中から、はーい!という元気な声が聞こえた。
扉が開く。
「やぁ、久しぶりだねミオ」
ミオという髪色が青いのが特徴の女の子だ。
背は少し低く、オッパイの主張も少ない。
活発で、素直な良い子だ。
「あっミトスくん。久々だねぇ〜どうしたのー?」
少し驚いた表情で俺を見る。
「今日この国を出るんだ。父上が外国を旅してこいってさ。だから知り合いに挨拶周りをね」
かなり驚いた顔で俺を見る。
「あのヒキニー…じゃなくて、ミトスくんがまさかの旅なんて。(陛下も堪忍袋の尾が切れたかな)」
ぶつぶつと呟くミオ。
「そうなんだよね。そうだミオ。何か欲しいお土産とかある?」
「お土産かぁ」
んー、と熟考するミオ。
「じゃあ帝国のS級ダンジョンの中にある夢幻龍の肝が欲しいかな。あれを手に入れられるとしたら陛下くらい強くないといけないけど、ミトスくんなら大丈夫ね」
「えー。俺そんなに強くないんだけど。小さい頃に父上に訓練って言われてボコボコにされたよ?」
「大丈夫だよ。私が保証する!! (今はこの国で一番強いでしょ)」
なぜミオが確証しているか。
五百年に一度、この国にはS級を超える強さを持つ破滅龍という災厄がやって来る。
人族の国なら一夜で滅亡させる程に凶悪で強烈な存在。
そんな強さを誇る破滅龍が手も足も出ず、一撃で屠られた。あれは陛下でも敵わない存在。
それをミトスくんは倒してしまった。
何か筋トレが足りないとか最近のトカゲは根性が足りないとか訳わかんないことを言ってたのは記憶している。
「まぁやるだけやってみるよ。じゃあそろそろ行くね。ミオ元気でね」
「うん。ミトスくんこそ元気でね」
ミトスの歩く後ろ姿を見えなくなるまで見つめているミオの目は、恋人を見る目と同じようだった。
「あーあ、また言いそびれちゃった」
視線を下げ、少し寂しそうにするミオ。
「帰ってきたら今度こそ告白しなきゃ」
頬をほんのり紅くさせ、未来を想像するミオだった。
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