37 王女様と王子様 06
クリフ殿下がお兄様に視線を移しました。
「
宰相。それは王を補佐して王国の政治を取り仕切る要職です。普通の貴族ならば
ですがお兄様は言っていました。ワイズ伯爵家は権力に近づきすぎないことによって生き残って来たのだと。歴代の当主全てがそれを意識していたのかまではわかりませんが、ワイズ家には過去に宰相になった方はいないことは事実です。
お兄様が返答します。
「
「ですが……」
クリフ殿下もお兄様の言葉を否定はできない様子です。
お兄様には裏の
私もお兄様はただ善良なだけの人ではないと理解しました。そしてこんな芸当は少なくとも今の私には無理でしょう。
「それに私自身まだ未熟者です。成長して経験を積んでも、
「……はい。ですが私があなたを宰相に就けることを望んでいることは覚えておいてください」
「そうですわね。オリヴァー。あなたには宰相の任を立派に
「過分なご評価、恐縮です」
ただ、クリフ殿下もライラ殿下もお兄様を逃がしてくれる様子はなさそうです。お兄様なら良い方策を導き出すのかもしれませんが、私には思いつきません。ですが私もお兄様をお手伝いするためには自分でも考える必要があります。どうしたものでしょうか……
「オリヴァー。あなたは大賢者を目指せる人です。そのあなたを
「私もエマと共に大賢者を目指すとは決めました。ですが必ずしも大賢者が宰相としてふさわしい能力を持つとは限らないと思うのです」
「ふぅ……あなたは誠実すぎますわね。もう少し野心を持ってもいいですのに」
「ははは。姉上。ワイズ伯爵家の方々は代々野心に乏しいようですから」
「はぁ……そうなのですが……」
ライラ殿下はお兄様をどうしても宰相として迎えたいようです。なにやらもどかしそうにしていますね。ライラ殿下もお兄様が大賢者を目指せる人だと評価してくださっているのは誇らしいです。お兄様が私と一緒に大賢者を目指すとこの方たちの前で言ってくれたのもうれしいですしね。
ただワイズ伯爵家が代々権力を握ろうとはしていなかったことは王家の方々も知っているようです。これならそのうち
「ところでエマも大賢者を目指しているのかい?」
「はい。私が大賢者を目指すのは立派な理由があるわけではないのですが、結果としてそれが人々のためになるならそれでいいのだと、お兄様は言ってくれました」
「道理だ。人が夢を目指す理由なんて人それぞれだと思う。私も応援するよ」
「ありがとうございます」
クリフ殿下も応援してくれました。私が大賢者になれれば国益になるという冷静な打算もあるかもしれませんけどね。
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