35 王女様と王子様 04
クリフさんがお兄様を見ます。
「オリヴァー先輩。一つお聞かせ願えますか?」
「私に答えられることならば」
クリフさんの表情は真剣です。貴族の令嬢たちがこの表情を見れば、胸をときめかすであろうことは容易に想像できます。一応私も貴族の令嬢なのですが。
その真剣な
「あなたは王と貴族、そして民の関係をどうお考えですか?」
「まずは私の返答は王族たるあなた方に対し不敬なものであることは、お許しください」
「はい」
重要なことだからか、お兄様も言葉が丁重なものになりました。お兄様は王族に対する
クリフ殿下の言葉遣いも丁寧になっていますが、それも賢者に対する敬意を込めたものなのでしょう。
「国は王と貴族があるからこそ存在するのではありません。民があるからこそ、国は存在するのです」
そのお兄様の言葉は王制のこの国にとっては危険思想なのかもしれません。ですが私もお兄様やお父様たちとこのことについて語り合ったこともありますが、お兄様たちの考えが正しいと確信しています。
お兄様は言葉を続けます。
「外敵さえいないならば、王や貴族がおらずとも民は生きていけます。ですが民がいなければ、王も貴族も
「……」
「だからこそ王も貴族も民を守り
「……」
それは道理にかなった言葉だと思います。ただ貴族にはこの考えを容認できないと考える人も多いだろうとは想像できます。貴族には民を奴隷同然の何をしてもいい所有物くらいにしか思っていない人もいることは、私も理解させられました。ですが自分たちのためにも民を守るという論理を理解してくれる貴族も多いことは期待したいです。
「そして統治者が民を
「……」
「統治者が民を虐げれば、民は
お兄様はモラルと実利の両面で殿下方に
クリフ殿下は感嘆の表情を浮かべます。
「素晴らしい……オリヴァー先輩。あなたは私が想像していたとおり、いや、それ以上の方です。あなたは賢者と呼ぶにふさわしい」
「そうですわね。そしてそれを公言できる、それも王族である
クリフ殿下とライラ殿下もお兄様の言葉を認めてくださったようです。賢者たるもの、権力を恐れて己を
ですがライラ殿下はうっとりした表情でお兄様を見ているような……
コニーも尊敬の表情でお兄様を見ていますね。ですがこの様子ならば、ライラ殿下とクリフ殿下も信じても良い方々なのでしょうか。
ライラ殿下が
「
「はっ! 我らは民を守らなければなりません。民はその見返りに税を納め、義務を負う。それで良いのでしょう」
ディクソン先輩たちも承諾の声を返します。トビー先輩やヘンズリーさんたちも熱心に賛同の声を発していますね。仕方なく言っているという様子が
ライラ殿下やディクソン先輩のような方は、お兄様や私とは一部考えの対立があるとしても、尊敬するべき方と思えます。ですが民を収奪の対象としか思わない人は、私は
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