第13話
「無事ですか?」
「ああ。お陰様で」
脅威の消失に俺は安堵して腰を降ろす。
それにしても強い敵だった。
あんな奴、序盤に出てくるような敵ではない。我ながら良く生きていたものだ。
本当にエルフィが居なければ死んでいただろう。
だが疑問だ。
エルフィが俺を助けてくれた理由が分からない。
アレンに恨みを持っているエルフィは俺の事を見捨てて逃げると思っていた。
だというのにそれどころかエルフィは戻ってきて俺を助けてくれている。
優しさか?
「エルフィ……何で俺を助けてくれたんだ?」
「アレンが私を助けるから仕方なくです」
なるほど。
「勘違いしないで下さい。私はアレンを許してないですから」
エルフィは隣に立って毅然と言い放った。
「今更いい人ぶったってアレンはアレン。今までやった事が無くなる訳ではありません」
「……そりゃそうだよな」
たったこれだけで全て許される訳が無い。
これからどうしたものか。
俺がそう思案していると、エルフィが隣に座った。
そして目線を合わせ言葉を紡ぐ。
「……それで、その」
もじもじと。
エルフィは視線を逸らして髪をいじりながら、続く言葉に悩んでいるように見えた。
「アレンは私に許して欲しいですか?」
「許して欲しいよ」
そりゃもう切実に。
支援を使われてボコボコにされるのは絶対に避けたい。
俺がそう言うと、エルフィは気が抜けたように溜め息をつき口を開いた。
「全く……本当にどうかしちゃったんですか? まるで人が変わったみたいです」
エルフィは目を細めながら顔を近づけ、俺の目を覗き込んでくる。
「今までだったら私を殴って拘束して言う事を聞かせるだけだったのに」
アレンって本当にクズだったんだな。
「心を入れ替えたんだよ」
文字通り。
「……まぁ良いです。助かったのは本当ですし」
そう言ってエルフィは立ち上がると、言葉を続けた。
「じゃあ早く行きましょう。他にも奴隷商が来てしまいますし」
「そうだな」
「じゃあ、はい。来てください」
エルフィは立ち上がる俺に手を伸ばしてきた。
どういう意図だ?
「何で?」
「おんぶしてください」
「自分で歩けよ!?」
「だってアレンに背負ってもらった方が速いですし」
「そりゃそうだろうけどさ……」
「ほらほら、許して欲しいんですよね? じゃあお願いします」
エルフィは俺の肩に手をまわし、上機嫌に続ける。
「もしかしたら『背中ひろーい! あったかーい!』って簡単に許しちゃうかもですよ?」
「そんなわけ無いだろ」
「無いですね」
じゃあ背負いたくないんだが。
「でもおんぶしてくれなかったら絶対許さないです」
純真無垢な笑顔でエルフィは脅迫してくる。この脅迫を踏み倒した後の結果を知る俺は要求の拒否ができなかった。
「……はぁ、分かったよ」
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