二章第6話 勝ち気な武術家少女の話聞く?

 そんでもって…。俺たち四人がギルドに帰る頃には既に日が沈みかけていた。道中ジロジロ見られている気がしたなぁ…。

 「何か見られてる気がする…」

 「多分ソーマきゅんが変態に勝ったから有名になっちゃったんじゃない?マスタークラスがゾンビに負けるなんて今までなかったもん」

 有名って…幾ら何でも早くない?


 視線に晒されながらギルドに着くと…

 「ごぷひゃ!」

 何か変な悲鳴をあげて扉を突き破りおっさんが吹っ飛んできた。おっさんは壁に激突し、気絶している。見たところ雨暮らしに行く途中で絡んできたおっさん。

 いやこの人しつこくない?


 そんなおっさんに注目してると突き破られ地面に倒れた扉により巻き起こった土煙から一人の少女が出てきた。

 「大口叩いてその程度?さっさと帰りなさいよ!このクソオヤジ!」

 少女はおっさんに指を刺して吐き捨てる。


 赤毛の髪の毛を結び目をお団子にしたサイドテイルにしている。お団子にはパンダの顔みたいな飾りがついてる。

 顔立ちは少し吊り目気味だが大きな丸い目をしていて、チョコレート色の瞳は気が強そうに輝いている。全体的に整った容姿の美少女。

 体つきも細くしなやか。健康美あふれている。


 服装は赤いノースリーブのロングチャイナドレスを着用。腰に黒の帯を結んでいる。スリットからは健康的な太腿を包み込むスパッツが見える。足は黒い編み上げブーツ。


 「"メルディ"ちゃん!落ち着いて!」

 「これが落ち着いていられますか!ちゃんと相手見てから喧嘩売りなさいよ!例えまだあってないとはいえ初めてできた後輩!

 先輩として守らねばでしょうが!」


 中からその少女を追いかけてココアも出てきた。ココアはその少女…メルディの腕を掴み落ち着かせようとする。

 

 「メルディ!ストップ!」

 「「へ?」」

 マスターが大きな声でメルディに静止をかけるとメルディとココアの動きが止まった。


 「マスター?あっちゃあ…とんでもないところ見られちゃった…」

 「だから言ったじゃない…。えとマスター。メルディちゃんはソーマ君の事で因縁をつけられてそれで…」

  

 バツが悪そうなメルディとそんなメルディを庇うココアにマスターは溜息を吐き。

 「成程。理由はよーく分かったわ」

 マスター…まさか怒ってるのか?


 「取り敢えずメルディ?仲間の事を大切にする貴方の心は素晴らしいわ?けどやりすぎは禁物。下手したら貴方の方が法の下で裁かれる側になりかねないわ。あんまり無茶しないで?」

 「はい…ごめんなさい」

 マスターに注意されたメルディはしょんぼりしている。


 そんなメルディの頭を優しく撫でた後マスターはくるりとおっさんの方を睨みつけてツカツカと歩み寄る。

 そしておっさんの腹をヒールで思いっきり踏んだ。おっさんはヒキガエルみたいな汚い声を出して覚醒した。

 「ねぇ?貴方さっきも私のソーマきゅんに絡んでたわよね?しかも戦いの時も随分とソーマきゅんに暴言を浴びせてくれたわね?」

 「ひ…」


 マスターの凄まじい圧におっさんは震えている。マスターは未だヒールグリグリを繰り返している。

 「言っておくけど…私は自分のギルドの子達を侮辱されるの本当に大嫌いなのよ。それにソーマきゅんは私の将来の伴侶であり現私の天使かつ暫定私の愛人なのよ「マスター?嘘つかないで下さい…」んもぉソーマきゅんったら照れて可愛いわねぇ♡」

 いや照れとかではない。マスター自重してお願いだから。


 「兎も角!ソーマきゅんに手を出すなら私もそしてうちの子達もただじゃおかないわよ?」

 見るとマスターは黒い笑みを浮かべているがその後ろで杖をパンパンと片手に叩きつけてイラついてる目がベンタブラック色のリン。

 剣を鞘から抜く様な動きをし始める迫力がすごいアシュリカ。

 そして俺が初めて会ったばかりのメルディはポキポキと両手を合わせて音を鳴らして臨戦体制。


 「ひ…ひぃぃい!」

 恐怖に負けたおっさんはマスターのグリグリから無理やり抜け出して逃げていった。

 

 「あはは!メルディ様に逆らうから行けないのよ!ざまー見なさい!」

 「ソーマに手を出す人は…コ◯ス」

 「…やりすぎたか?」

 マスター以外の三人はおっさんの背中をそれぞれ違う反応をしながら見ていた。なんか約一名不穏な事言ってたけど気づかないふりをしておこう。


 「あらあら残念。もうちょっとぼこぼこにしたかったわ。でも…ソーマきゅんが無事ならそれで良しなのよ♡ハァハァ♡」

 「あはは…ありがとうございます」

 『お主の周りのおなご…ちとクレイジーすぎんか?』

 「(それな…)」



 ◇



 ちなみに後々…女神の愛子にいるゾンビはギルドの女性を誑かして守らせる外道だと噂が一部で広まる事となる…。



 ◇



 そして…

 「へぇ?アンタが噂の新人ゾンビ?マジで話せんだ」

 「あ…はい。ソーマ・シラヌイと申します」

 「アタシはメルディ。メルディ・グランディール。気軽にメルディ先輩って呼びなさいよね!返事は?」

 「はい。メルディ先輩」

 「宜しい!」


 メルディと自己紹介をし合っている。先輩呼びを強要されて…。話してみるとイメージ通りの活発系女子だ。体育系かぁ…俺文系だから相性どうだろう?まぁ合わせようと思えば合わせるのは可能だけど。


 「あのメルディ先輩。さっきのあれって俺のことで喧嘩売られたんですよね?すみませんでした。まさか迷惑をかけてしまうなんて」

 「そういうのはお互い様でしょ?ココアから聞いたわよ。あの変態ネクロフィリアに勝つために努力したんでしょ?

 そんな努力も知らないでバカにするやつなんか野放しにできないじゃない」


 しかも正義感が強く仲間思い。なんか少年漫画の主人公とかにいそうなタイプだな。でも悪い人じゃないみたいだ。俺がゾンビってわかってても普通に接してるし。


 「そうなんすね…。まだ会ったこともない俺の為に…メルディ先輩って優しいんですね」

 素直な感想を述べるとメルディは顔を赤くし始めた。

 「ふ…そ…そんなの当然でしょ!なんたって私は優しい先輩だしー?」

 と赤い顔でサイドテイルを指でクルクル遊ばせている。何で顔赤いんだ?


 何故かリンとココアもじとーっとした目で見てくる。

 「ソーマって天然だよね…」

 「タラシというか…ソーマ君あれで無自覚なの?ちょっとすごいね」

 

 何やらコソコソ話しているが何なんだ一体。


 「まぁメルディにとってはソーマは初めて出来た後輩だからな」

 「そそ!ソーマ?わからないことがあったら先輩である私に相談しなさい!わかったわね」

 「はい。よろしくお願いします。メルディ先輩」

 「ふふふ宜しい!やっぱ先輩って響き最高だわ♡」


 上機嫌そうなメルディ。これであと会ってないのは三人かな?あと三人も女の子らしいけど…。

 このギルドの美少女&美女率は異常。あとついでに男は美男子だけ。(俺除く)

 あと三人ももしかして美少女or美女?


 …てか俺このギルドにいていいのか自信無くなってきた…。

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