第32話 図書室にて
僕らの独房は監視・盗聴されている
……なるほど、伝えたいことってこれだったのか。
でも、実は私も監視カメラがないかは探していた。けど……少なくともヤミの部屋には見当たらなかったの。だから私は、監視カメラとは別の可能性を考えていたんだけど。
私は本で口元を隠し、声を落としてヤミに話しかける。
「それって……看守がこっそり部屋の様子を見て、報告していたって線はないの?寝ている時に巡回して、小窓から覗いていたかも。それでカミサマに報告したのかも。監視カメラで何から何まで見られているかどうかはわからなくない?」
「でもこの間の面談の会話の内容からすると、カミサマは君がやってきた時刻までほぼ正確に把握していたんだ。君が時空の穴から落ちてきたということも、どうやら知っている風だった。つまり、一部始終を見ていたと考えるのが自然だと思う」
……カミサマ。彼って、人間なのかしら?
おそらく、人間ではない何か……な気がしている。私の予想では、
「やっぱり私は、カミサマに会わなくてはいけない」
「……無理やり会うのはおすすめしないけどな……こんな狂った刑務所を作っちゃうようなヤツだよ?勝手なことしたら、どうなるかわからない」
「でも、多分私が会わなくてはいけないタイプの相手だと思う。時空の
「危険だとわかっていて、行くんだね……」
「私は強いから。最強の魔法使いなの。……いまだにここでは魔法が使えないけど」
少々の自虐と自信、両方を含ませる。……というか、一体全体私はいつになったら魔法が使えるようになるんだろう。
「僕には君を止めることはできないけど……」
ヤミは視線を落として呟いた。そりゃ、元気もなくなるよね。だって彼には何一つ関係のない話だし、『大人しく残りの時間を過ごしたい』みたいなことをしきりに言っていたから。私に変な動きをされるのは、彼の望むところではないだろう。
でもね、今なんとかしなくては
するとヤミは、私が予想もしていなかった言葉を口にした。
「……でも、協力はできる」
え、なんて?
「僕にできることがあったら、何でも言って」
「あのね、わかってる?私はこれから刑務所のルールを全やぶりする勢いで、ここの秘密を解き明かそうとしている。なんならカミサマに無理やりご対面して、
彼は私の目を見て、ゆっくりと頷く。彼は、静かな決意を固めた人の顔をしていた。……どうしよう、そんな決意をされても困ってしまう。
「それに多分……独房だけじゃなく、カミサマはこの刑務所内のことはだいたい把握できているんじゃないかしら。だから、コソコソ話も怪しい行動も全部筒抜けでしょうね。筒抜けなら隠しても関係ないということで、私はこれから堂々とここを調査することにするよ?
もしかしたらそのうち、カミサマと対決!なんてことにもなるかも。私に協力なんてしたら、あなたには危険や不利益しかないと思う。とにかく、いいことが一つもない」
……どう?気が変わって、協力を諦める気になったかな?
……………………いや、諦めてない顔してる……。ちょっと、いい加減にしてよ……。変に巻き込みたくないんだって気持ちをわかってほしい。
「もし私がカミサマを倒せたら、死にたいあなたにとっては悲劇的なことに『死刑が延期』されるかも。
もしくは私がカミサマに負けたら、あなたも連帯責任で死ぬことになるかも。本来の死刑執行よりもずっと早く。……端的に言うと、協力は諦めて欲しい。巻き込みたくないから」
「でもそれって、どっちにしろ死ねるってことだろ。じゃあ、協力しない理由がないよ。僕は『死刑』になりたいというより『死にたい』んだ。理由や方法は何でもいいんだよ」
何の迷いもなく、間髪入れず、ヤミが答える。
「はぁ…………どこまいっても『打てど響かず』、ね……」
私は大きなため息とともに、『降参』の思いで肩を竦めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます