報告三六号 スパイ・リヨン
報告案件 スパイ・リヨン
報告者
右園死児情報を狙い国内活動していたスパイグループのアジトを、国家保安局が強襲。数名を確保したが、リーダー格のアルメイダ・リヨンがスパイ活動の成果と見られるバッグを建物外に持ち出したため、雪村瞳捜査官と
リヨンは繁華街を二キロメートル逃走した後、路上のマンホールの蓋を特殊工具でこじ開け、下水道に降りた。雪村達も続いたが下水道は管理状況が悪く、連日の雨でなかば水没しており、三人は水流に呑まれ遭難。のちにただ一人生還した雪村の証言によれば、水流は現役下水道から旧廃棄水路まで流出していた。
旧廃棄水路は地下四階の深さに落ち込んでおり、汚水が溜まり地底湖化していた。雪村は他の二人を見失い、また携帯していたスマートフォンやマグライトを紛失したため暗中を単独探索せざるを得なかった。長時間の探索の末に雪村は光源を発見、自力で一階分の高さを這い上がると、水門上にリヨンがいた。
リヨンは発光する脊髄を掲げており、そばには焼け焦げたバッグが落ちていた。雪村は支給拳銃を紛失していたため、ベルトのバックルに収納していた予備の拳銃弾と、脱いだ靴を手にリヨンに接近。口頭で警告を発した。リヨンは直後に脊髄を呑み込み、変貌。臓器をすべて排便し、三メートルほど伸長した。
雪村はリヨンが攻撃行動を起こす前に接近、拳銃弾を発光するリヨンの喉にあてがい、靴のヒール部分で一撃した。発射用火薬が炸裂し、弾頭が喉と脊髄を損壊。リヨンは水門から落下し、汚水に没した。
雪村のもとに救助隊が到達したのは、彼女が下水道に入ってから五日後であった。雪村はそのまま入院、近藤一捜査官は行方不明、リヨンと脊髄は、一ヶ月に及ぶ捜索の果てに回収された。この過程で四三体の動物の死骸と二人の身元不明死体が発見され、都市下水管理体制の見直しが提議された。
リヨンと脊髄は軍収容施設に移送。脊髄の素性は不明。確保したリヨンの仲間を尋問した結果、彼らの所属先の国家機関が判明。軍部は政府に対し当該国家への抗議と制裁を強く要請した。
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