第7話 ないしょのないしょのないしょだよ その2
ぽかぽかとすっごく温かい。いやなんか熱い? 熱いけど気持ちいい?
「ん……」
「目が覚めたか?」
「グラム?」
ふわりとテティが目を開くと目の前にグラムファフナーの大好きな顔があった。
「……とっても綺麗でカッコいい」
「それはありがとう」
「うん、でも、どうして裸?」
テティはぺたぺたと目の前の胸板に触れた。広くてたくましくてこれ素敵だけど、なんで?
でも手で触っている肌から、なんか伝ってくる。すごく心地よくて、火傷しそうに熱いけど、ずっと触れていたい。
テティはぺたぺた撫でていた胸にすりっと頬をすりつけた。そして「ほぉ……」と息を吐く。
「お前は……それは無意識か?」
「ん? なに? テティも裸?」
自分の月色の長い髪が肌にさらりと流れる。グラムファフナーに触れている手も、人間の五本の指だ。彼と絡ませてる脚の感触もなんか生々しい。
「ふ…ぁ……」
それから口づけられた。するりと口中に入りこんできた舌も唾液も甘い。触れあった肌よりも、とろとろと流しこまれるそれをテティは夢中になって、吸った。やり方なんてわからないから、ただ舌を絡ませて、絡めとられて吸われて、頭の芯がジン……として、ぼんやりと熱くて気持ちいい。
「もっとだろう? テティ?」
「ん……もっと、うんっ……」
銀の糸を引いて離れた唇を名残惜しく追いながら、告げると、かっぷり食べられるみたいにすっぽりおおわれた。
そして、その熱を感じれば感じるほど頭がぼうっとする。お酒に酔うってこんな感じだろうか? テティは子供だから駄目と、ダンダルフは秘蔵の山葡萄のお酒を飲ませてくれなかったけれど。
「……グラム…もっと……」
「まったく、お前はわかって言っているのか?」
「悪い子だ」と耳をやんわりかまれて「きゃっ」と声をあげる。男の首に抱きついて、頬をすり寄せる。
「僕……悪い子……なの?」
「安心しろ、私も悪い大人だ」
「あ、あ、あ、じゃあ、共犯者っ…て……のかな?」
「そうなるな」
グラムの声は低くて心地よい。触れあった唇も……熱くて、熱くて、意識が蕩けてとけた。
◇◆◇ ◆◇◆ ◇◆◇
「加減を覚えないといけないな」
グラムファフナーが自分の寝室の寝台の上。上掛けをかぶってこんもり盛り上がっている固まりに話しかける。それを優しく撫でながら。
「お前は自分の魔力は無尽蔵だと思っていただろう? だが、それでも限界はある。お前の身体を動かしているのが魔力である以上、それが切れればたちまち命の危機だ。これからは気を付けるんだな」
「加減なんてわからないよ。こんな風になったことなんて、一度もなかったんだもの」
籠もった上掛けの中でテティはもごもごと言う。
「今回は私が魔力補給して間に合ったが、そう度々という訳にはいかないだろう?」
そうだ。あれは魔力補給だって今のテティならわかる。触れあった肌から流れこんできたのは魔力で、魔力の補充には触れあうのが一番だって。
でも、とってもイケナイことをした気分だった。
「ないしょだからね」
「ん?」
上掛けからもぞもぞ顔を出したら「頬が真っ赤だぞ」と言われて、乱れた月色の髪を大きな手で梳かれて、その気持ちよさに猫のように目を細める。
いや、グラムの手は気持ち良いけど、そんな場合じゃないと、テティは上目づかいでキッ! とグラムファフナーをにらみつけた。
「こんなイケナイことしたのないしょのないしょのないしょだからね!」
それにグラムファフナーは軽く目を見開いて、くすりと笑う。
「私とテティの内緒がまた増えたな」
と頭を撫でてくれた。
「たしかに秘め事は他人に話すものではないな」とも。
秘め事ってすごくイケナイ感じがすると、テティは思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます