第10話
「ふかふかのベットで早く寝たくなってきたわ」
手放していた意識を取り戻してそう呟いた。
石造りのベットもとい地面から体を起こしたみのりは辺りを見回す。
また記憶がない。
ただ敗北の重みだけが両肩にのしかかかる。
目の前にいたはずの男が後ろにいて耳元で声がしてそこからの記憶がない。
「本日2度目の記憶喪失。敵消失。
目の前の天地を切り裂くどでかい穴!」
ひび割れ一つなかった地面や石像が見るも無惨な姿になっていた。
埃が舞い散り、砕け散った石がそこら中に広がり、
天井の穴からは一筋の光が差し込んでいた。
「なんのこっちゃ!
え、ちょっとまって、私?私なのか?そ、損害賠償大丈夫そ??」
気にするところが少し、いやだいぶズレている女の子
桜坂みのり。平常運転である。
「というかなに実は私には隠された実力があって瀕死の際に覚醒、超常の力で敵を圧倒みたいな!
完璧美少女の私ならありえるか?
まったく神様ってば私にどんだけ属性特盛にするつもりだよっと!」
なんて事を叫びながらさっさと神殿から出ていった。
もし本当にほとんど信じてはいないが私が神殿を壊したとしたら神殿保存教会てきな団体から賠償請求されるかもしれないし、私が壊してないにせよ、なんとなく居心地が悪くて早くその場から離れたかった。
まるで何かから逃げるように。本能からの警告を感じているかのように。
(なんかお宝ありそうだったんだけどな〜。
いやけど誰かに見られたとしてもあの穴はもともとありましたよ〜って主張すれば信じてもらえたかな、まぁいいや)
そこでふとまだ配信の途中だった事を思い出した。
(そうか、配信!
視聴者に聞けばあの穴と敵のその後とか分かるかな)
「み、みんな〜やっほ〜えっとー元気?私はモリモリ元気〜」
平静を装って何か言おうとしたが動揺が激しすぎて意味不明な事しか言えなかった。
心臓はバクバクである。
(敵は正直なんかどっかいったからいいや。
ヘルハウンドと同じくなんかあれでどっかいったんでしょ多分。けどなんだろう心にぽっかり穴が空いてるような気が…)
問題は配信では穴が空く前の神殿が映っていたから、もともとありましたよ戦法が使えない事だ。
(どうか穴をあけたのが敵または私以外の誰かであってくれ)
〈みのみのみの〜!〉
〈おっやっと写ったみの〉
〈無事!?!?〉
〈「ずっと何かに使われてたみたいだね〜」から何も聞こえないし写らなくなったから心配してたよ」〉
〈みのみのみのみの〉
〈あれさっきの草原に戻ったん?神殿は?〉
(ん?ん?んんん?そのセリフは確か、あの男が出てくる直前?
つまり穴が私か私じゃなくても私だという証拠は無いってわけ?
ふふふ。なんかの魔法干渉バグかな?
アプリアップデートしてなかったっけ?
まあいっか!男の事は話さない方がいいよね…まぁ
天は私を完璧で究極の美少女を見捨てなかったってわけか!)
「んーっと神殿の調査をしていたんだけど、ちょっと急に眠くなったから寝てた!あとなんか神殿はなんかこうあれでそう、なんとなくあれだから次の層の探索とか進めたくなったんだ。てへっ」
無理がある。
とても無理がある言い訳だが。
てへっと同時にかましたウィンクの威力は効果絶大であった。その証拠に。
〈みのみのみのみの〉
〈くっなんつー威力だみのみの〉
〈なにそれただの言い訳じゃなみのみのみの〉
〈みのみのみのみの〉
〈みのみのみのみのみのみ〉
コメント欄はほぼみのみのである。
完璧美少女がちょっとウィンクすれば人類皆みのみの教の仲間入りだ。
女の子からの返信が無く1週間後の返信が「ごめんお風呂入ってた」でも信じるように美少女には恐ろしい力があるらしい。
みのみのみのみのみの
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