24 早過ぎた再会

ここに座らされてどのくらい経っただろう。

名前を訊かれて、怪我をしていないかなどを心配されてからの、尋問開始。

恫喝されているわけでも脅迫されているわけでもないけれど、ずっと同じような事を繰り返し訊かれている。



「すみません。

本当に適当に歩いていたので入った場所とかなんで入れたのかとか分からなくて。

俺、武器とか使えないから、なんか気配がしたらその度逃げてたし・・・」

「ハルーカくん、なんでもいいから思い出してくれないか。

このままだと君みたいに意図せずこの森に入ってしまう人が出てしまうんだ」



大体の場所でもいいから!と騎士さんは言うけどさ、そもそも外から入ってないし・・・。

どうしたものかなと考えていると、コンコンと扉にノックがされ外から声が掛けられる。



「今しがた団長達が出て参られた。ここはまだ空けられないか?」



仲間の言葉に目の前の騎士は「あー・・・」と手のひらで目元を押さえ、ついで上目遣いに俺を見た。



「どうやら時間切れだ。

何か思い出したら騎士団でもギルドでもどちらでもいいから尋ねてくれると約束してくれ。本当に大事な事なんだ」

「わ、分かりました」

「長々引き留めてすまないな」

「いえ・・・こちらこそ仕事を増やしてしまったようで、本当にすみませんでした」



ペコッと頭を下げると、騎士さんは体格に見合う大きな手で俺の頭をぐりぐりと撫でた。



「気を付けて家に帰りなさい。もう危険な場所に迷い込んだりしないように」

「はい、では失礼します」



もう一度軽く頭を下げて、扉を開けて促されるまま小屋を出る。

それと同時にクロウが横に付いた。

不自然なほど近く、ぴったりと。



「ん?」



気になってクロウを見つめると、クロウは鋭い目で検問所を見ていた。



『ハルカ』

「ん?」

『昨夜助けた男だ』

「っ!?」



ハッとしてそちらを見ると、数人の男と一緒にあの男が出て来ていた。

肩部分の服が大きく破れ、筋肉質な腕が見えている。

見張りに立つ人が「大丈夫なのですか!」と大袈裟に騒いでいるが、あの男は安心させるようにか薄く笑いながらポンポンと見張りの肩を叩いてそのまま通り過ぎた。

くそ。治したとはいえあんなに大きな傷を負ってたんだから、ちゃんと動けるまでにはもう少し時間がかかると思っていたのに。

なんでこんなにすぐ動けてるんだあの人。

体力の差か?

回復早過ぎだろ。


っと、ヤバい。

咄嗟にフードを被ったけれど、間に合っただろうか。

男達がこちらに向かってくる気配に、俺は大急ぎで俺の後ろにいる騎士に向かってお辞儀をしそのまま走り出した。

真正面で向かい合ったわけではないが、あの時一瞬とは言え目が合った相手だ。

出来るだけ接触したくはない。

本当は飛んだ方が速いが、こんなに人がいるところでそんなことをしたら逆に目立ってしまう。

ここは出来るだけ人が多くいる場所に移動し紛れてしまうに限る。



「君!!待ってくれ!」



走り出した俺に、あの男はやはり気付いていたのか待てと叫ぶ。

いやいや、誰が待つかよ!

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