第43話 迅の家へ4~放火~
「迅と付き合えないなら、こんな世界なんて必要ない。滅ぼすのみ……」
まるでRPGの悪役のようなセリフを彩莉センパイは言う。もちろん、ここは現実だ。そんな簡単に世界は滅びない。
「みんな消えればいいんだ、ちんちくりんちゃん。あなただけは生きなさい。
彩莉センパイによってわたしはリビングから無理やり追い出された。ガラス越しにわかる。どこからか出したライターでテーブルに着火した。わたしは慌てて消防署に連絡した。
消防署の判断で警察も来ることになった。しばらくして火も無事鎮火した。火災の現場をはじめて見たわたしから見るとひどい燃え具合だった。幸恵さんも副担任代理も……呼び方これでいいのかなぁ?
「あの広瀬副担任代理先生……お義父さん?」
「ん、あぁ、どうした、夏芽ちゃん」
「その……学校外でも迅くん関連でお会いした時は広瀬先生と呼んでいいんですかね? お義父さんと言うわけでもないし……」
「んーあぁ、先生でいいんじゃない? なぁ、迅」
「え、父さん、中等部の先生だったの?」
「正しくは3年の副担任代理だ」
「そんなことよりも……」
『ご主人』と警察官と消防士が呼んでいる。広瀬先生は小走りで駆けつけた。ちらっと少し視線をずらせば、ちょうど彩莉センパイがパトカーに案内されていた。目が合ってしまった。
「梶原 夏芽!!!!」
誘導していた警察官も黙らせようとしている。でも、叫び続けている。わたしの悪口を言っている。それこそ容姿のことであったり、性格のことだ。その後、警察と消防は家の中に入りいろいろ調べている。
――あぁ、恋愛って難しい
親友が遠方から追いかけてきた想い人を奪って、彼氏の初恋の人からは恨みを買う。わたしはどうしたらよかったんだろう。
広瀬先生が戻ってきた。
「母さん、迅。あー、夏芽ちゃんにはそこまで関係ないはず。警察の事情聴取のために父さんはパトカーに乗る。この家は燃えた部分だけでも修繕が必要だ。ただ、まだ警察の現場検証とかもあるから、最低でも2週間は帰ってこれないんだ。まぁ、ホテル暮らしに現場検証期間はなるし、修繕などの期間も含めると半年を見るべきかもしれない。その辺考えるとどこかに賃貸かりるべきかも……」
「え」
迅くんが驚いた顔をしている。それは幸恵さんも同様だ。
今、閃いた。わたしはひとつ考えがわいてきた。
「あの……ここホテルあんまりないですし、迅くんだけでも梶原家で預かりましょうか?」
「でも……」
幸恵さんは不安そうに言葉を発した。広瀬先生は考えている。
「確かに我が家は夏芽ちゃんをクリスマス会の準備期間預かっていた身ではあるが、それとこれは……」
「そうですよ……ね」
『夏芽、スマホ鳴ってるよ』
迅くんが教えてくれた。
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