第49話 レオニードの魔道具

 アンナたちは、各地に残っていたエリシャの持ち物から魔法で記憶を辿り、彼女がすでにこの国を出国していることを知った。


 三人は、彼女を追ってローゼンブルグを離れるか、彼女の持ち物をさらに探して記憶を呼び起こすか迷っていた。


 とりあえず、呼び起こした記憶から、レオニードがエリシャからもらった魔道具を持っているらしいことがわかったので、会いにいくことにした。


「お久しぶりね、レオニードさん。ケガの具合はどうかしら?」


「おかげさまですっかりよくなったよ。君のおかげだよアンナちゃん。本当にありがとう」


 そう言いながら、レオニードはアンナの手を握りしめた。


「気をつけてアンナ。この人すぐに女性の身体を触る変態だって、メローネが言ってたわよ。ヨナさんもよくお尻を触られてるらしいわ」


「おいおい。命の恩人にそんなことするわけないじゃないか……」


「どうだか……」


 レオニードはアロウラから疑いの目を向けられている。


「まさか、君たちが探していた人物があのエリシャだったとはね。僕が彼女からもらったのはこれさ」


 レオニードが取り出した魔道具は腕につけるブレスレットだった。


 中央に綺麗な魔石が付いている。


「へえ、ブレスレット型の魔道具なのね」


「これは体内のオーラを強制的に魔力に変換する魔道具だよ。ああ、ごめん。僕は生体エネルギーのことをオーラって呼んでいるんだ。このアイテムは使用者の周囲から魔素を吸収してオーラを無理矢理魔力に変換するんだ。だから、君たちが探しているものとは真逆の効果を持つアイテムだよ」


「生体エネルギーを魔力に変えるか。確かに、私たちが探しているものとは逆に作用するのね」


「そうだね。エリシャは僕が魔法が苦手なのを知っていたから、あえてこれを僕にくれたのかもしれない。このブレスレットを身につけると、僕みたいに魔力を生み出すのが苦手な人間でも簡単に魔法を使えるようになるけど、常時使用し続けると体内に魔素を溜め込んで魔物化が進行してしまう危険があるんだ」


「まあ、そうなるわね」


「もっとも、魔素に完全に耐性がある人間がいれば、問題無く使用できるだろうけどね。そんな人がいるとは思えないけど。そうだ、僕を助けてくれたお礼に、これはきみにあげるよ」


「大事なものなんでしょ? 本当にいいの?」


「今、本当にこれを必要としているのは君たちだろう?この魔道具の構造を解析すれば、君たちが探しているアイテムのヒントが見つかるかもしれない。簡単に考えれば、こいつの逆にすればいいんだからね」


◇◇◇


 お久しぶりです。


 この物語の語り部のアンクです。


 ここでみなさまに一つお伝えしたいことがあります。


 この世界の人間は世界再編時に別人に転生していますが、現在のこの世界の女神であるドロシーに関係のある人物は何故か例外で、世界再編時に別人に転生されずにそのままの姿と記憶を維持していたようです。


 つまり、ローラ、エリシャ、そしてレオニードはドロシーと何らかの関係があったということです。


 それでは、物語に戻りますよ。


◇◇◇


 アンナたちがレオニードと会っている間も、ヴィランの二人が、彼女たちを監視していた。


 一人は緑髪のロングヘアの女性。


 もう一人は赤髪でショートヘアの女性である。


 しかし、アンナたちが警戒しているため、三人に接触することが出来なかった。


「くそ、あいつらかなり警戒しているね。なかなか手を出せないよ。どうしよう、レベッカ?」


「焦る必要はないよ、ジェシカ。マグナス様もそういっていたじゃないか。とりあえず監視を続けるよ」

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