第2話 アンナとクロウド

「ねえ、アンナ。本当にこの村を出るの?」


「今更怖気付いたの? クロウド。大丈夫よ。あんたは私についてくればいいの」


「みんなに気づかれると面倒だから、夜中に出るわよ。迎えにいくから、それまでに準備をしておきなさい」


「準備っていっても、僕、この村を出たことがないから……」


「仕方ないわね。私があんたの分も支度しておくから、あんたはすぐ出かけられるようにしておきなさいよ」


「ありがとう、アンナ。じゃあ夜中にまた会おうね」


(まったく、手がかかる子ねぇ……)


 新月の夜、村は真っ暗で静まり返っていた。


「アンナ、僕怖いよ。暗いの苦手なんだ」


「情けないこといわないの。ほら、さっさといくわよ」


 アンナはクロウドの手を握ると、村の出口へと進んでいった。


 二人が村の出口に着くと、仮面をつけた女性が待ち構えていた。


(大人の……おねえさんがいる!!!)


(ちっ、やっぱり気づかれたわね……)


「あらあら、どこへ行くのかしら? こんな時間に、デートなの? 村の掟を破るならお仕置きしなくちゃいけなくなるから、早くお家に帰りなさいな」


「その声は、アロウラでしょ。あなた、聞き耳を立てる癖、やめなさいよ。友達無くすわよ」


「あら、あなたは、アンナね。ということは、もう一人はクロウドかしら。ふふ、私は耳がいいから村中の音が自然と聞こえてしまうのよ。もう一度だけ言うわ。二人とも、早く家に戻りなさい。自分から戻らないなら私が強制的に戻すわよ」


 アロウラは魔力で聴力を常に強化している。

 それは彼女が里の上層部から、里内の監視という密命を受けているからだ。


「そうやってとぼけるのやめなさいよ。足音で私だって気づいてたでしょ。まあいいわ。力づくでも通ってやるから、止められると思うなら止めてみるといいわ」

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