第101話 柊の野望
「生成AIってどうやって作るんだ?」
景隆の質問は至極もっともだろう。
「生成AIと言っても色々あるので、とりあえず自然言語のLLMに絞っていいか?」
「あぁ、構わないぞ」
柊はしばし考え込んだ。
おそらく、この時代の技術に合わせた説明の仕方を考えているのだろう。
「まずは、さっき話したアテンションメカニズムを使ってニューラルネットワークのモデルを作るんだ」
「ニューラルネットワーク?」
「人間の脳の仕組みを模倣した機械学習モデルよ」
新田は補足しながらも、先を促したいのかウズウズしていた。
「モデルの概念は少しだけわかったけど、どうやって実装するの?」
「入力データを解析して、特徴を抽出するエンコーダと、そこから得た情報をもとに出力データを生成するデコーダを作るんだ」
「どうゆうことだってばよ」
「たとえば英語を日本語に翻訳するタスクがあるとして、エンコーダは英語の文章を解析してその特徴を取り出すのよ」
「デコーダはその特徴から日本語の文章を生成するのか」
柊は新田の飲み込みが早いことに驚いていた。その反面、景隆は話題についていくのがやっとだった。
「エンコーダとデコーダはいくつかの層にわかれるんだが、その話は後にしよう」
新田は露骨にがっかりとした表情をした。
「この仕組みの優れているところは、複数の処理――たとえば各単語などを独立して処理できるんだ」
「並列化して計算できるってこと!」
「あぁ、そうだ」
「処理を並列化することで、計算が大幅に効率化するってことか」
「ちょっと待って……ならばCPUじゃなくて、GPUのほうがいいんじゃない?」
「さすが新田だ」
「ちょっと待って、GPUって画像を処理するプロセッサだろ?」
「GPUは画像処理に向いているけど、その用途以外にも使えるのよ」
「それで、なんでGPUなんだ?」
「GPUはコアがたくさん搭載されているのよ」
「だから並列化に向いているのか」
景隆は以前、深層学習(ディープラーニング)にはGPUがあったほうが良いと柊から聞かされていた。
「LLMってのは、ディープラーニングの一種か?」
「その認識で合っている」
景隆はディープラーニングのすごさを柊から聞かされていたが、生成AIはそれを遥かに上回る衝撃的な技術であった。
それは新田も同様であろう。
「俺のいた時代でも、GPUでこのモデルを動かしていたが、並行して専用のチップの開発が進められている」
「画像処理に最適化されたプロセッサよりも、より生成AIに特化したプロセッサを作ってるってことか」
「あぁ、そうだ」
「ちょっと、柊、今すぐ私を未来に連れていきなさいよ!」
「無茶言うなよ……」
景隆の人生史上、最も大きな無茶振りだった。
「てなわけで、俺の時代ではGPUの争奪戦が起こっているんだ」
「まぁ、そうなるわな」
「これから生成AIを作っていく上で必要になるわね」
新田はやる気まんまんであった。
もちろん、景隆に異論はなかった。
「なので、
「「えええええっ!!」」
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