第11話 企みの代償2

「まったく、王位をねらうとは……大それたことを」

 私は馬で仕事に向かう途中、ひとりごちた。


 王への挨拶をし、副騎士団長のトリスタンに後を任せると、牢屋に向かった。

 牢を守る兵士に尋ねる。

「国王を狙った男は何か話したか?」

「それがなかなか口を割りません」

「そうか。分かった」


 私は牢の鍵を受け取り、私の馬に細工をした男を牢から出すと話を聞いた。

「知っていることを言え。でなければ……耳をそいでやろうか? それとも指を一つずつ落としていこうか?」

 私が男の目を見つめ脅すと、男はかすかに震えながら「勝手にしろ」と言った。


 私はナイフを取り出し、男の耳に当てた、すこし力を入れると、男の耳から血が流れた。

「やめてくれ……。言うよ、言う。……ベック公爵に、国王を殺すよう頼まれた。国王の馬は管理が厳しかったから、対戦相手の馬に、暴れるよう細工をした」

「そうか。他に知っていることは?」

「無い。金をもらったからやっただけだ。……殺さないでくれ」

「それは難しい」


 私はナイフをしまい、牢屋から出た。

 国王に男から聞いた情報を報告する。


国王はすこし考えた後、言った。

「ベック公爵を呼んでくれ」

「馬に細工をした男はどうしますか?」

 私の問いかけに国王は無表情で答えた。

「適当に処分しておけ」

「分かりました」


 翌日、ベック公爵が呼び出された。

「余の命を狙うとは……覚悟はできているのだろうな?」

 国王が冷たい目でベック公爵を見つめている。

「私がそんな恐ろしいことを考えるとお思いですか? なにかの間違いです!」

 ベック公爵は憐れみを誘うような声で国王に訴えたが、国王は首を横に振った。


「証拠は揃っている。週末には刑が執行されるだろう」

「ブラッド!」

 私が最終宣告すると、ベック公爵はうなだれた。力の入らない体を兵士に支えられ、ベック公爵は謁見室を出て行った。

「ブラッド……後悔するぞ」

「反逆者を見逃すわけにはいかない」


 ベック公爵が牢屋に連れていかれた後、ベック公爵夫人が国王への面会を求めて王宮にやってきた。国王との面会は許されず、私が対応することになった。

「ブラッド騎士団長、あなたが見逃してくれれば……夫は助かったのに!」

「ベック公爵夫人、それは無理と言うものだ」

「愛するものを奪われる残酷さを……貴方にも思い知らせてやるから!」

 ベック公爵夫人の目に冷たい炎が宿った。


「ベック公爵夫人がお帰りだ。お送りしなさい」

 私は兵士に指示すると、騎士団の練習場に戻った。


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