年上


高校二年生、初夏。

五月病とかいうのが襲ってくるらしいが、俺にもそれが当然ある。


コンビニバイトを、もう連続フルで入れないからだ(落胆)。

うおおお俺に労働を! 労働を寄越せ!



「聞いた? 3組の村田君の話」

「ああ聞いた。実は昔好きだったから……」



ぽけーっと席に着く。

すれば、女友達……高橋と田中が話している。俺の方にも気付いてない。


珍しいな。あんな風にこそこそ話して。



「何してんの?」


「! 佐藤……あ、いや。この話はちょっと。話しにくいというか……」


「ああそう? ごめんごめ――」



そんな風に彼女は言う。

悪いことしちゃったかな。



「聞けよ、あの黒髪清楚美人の村田君が大学生女とラブh——」


「おいー!」

「むごごごご」



……なんて思ったら、そんな話だったらしい。

高橋が田中の口を塞ぐ。俺の貞操ぐらい手遅れ(ビッチジョーク)。


周りの男共が冷ややかな視線を送ってるね! なんで俺にも向いてるのかな!



「ま、見てくれと中身は別だって考えるしかねーよな」


「……」

「……佐藤って、結構オトナだよね」


「いやいやガキだよ俺は」



そんなことを言う二人。

俺は子供だ。じゃないと、店長が大大大大大人(?)になってしまう。



「んだよ。やっぱり年上か!? 年上なのか!」

「はぁ。生まれたのが早かっただけの癖に……くやちぃ!」



項垂れる彼女達。

年上。年上ね。



《——「私は大人で、君は子供なんだから」——》



すぐに出てくるのは、彼女の顔。

包み込むような温かさ。


俺が欲しかったモノを、全部くれた――



「「……佐藤が見たことない顔してる……」」


「え? あ、あー。別に年が上だからって好きになるかは関係ねーよ」


「「…………」」



ジトっとした目で見てくる二人。

ああダメだこれ。弁明できん。



「今日天気悪いね(完璧な話題転換)」


「もう終わりだ……佐藤もそうなんだ……」

「寝る……」



机に項垂れる二人。



「逆に言えば、一年から見ればお前らも年上だけど」

「「確かに……」」


「な? モノは見ようだって。そりゃこっちから見れば理不尽だけ、ど……」



口にしながら、不意に蘇ってしまう。

閉じていた記憶の蓋が開く。


高校一年生の夏。

前の世界でも、失恋相手は年上だった。

やけに眩しく見えた彼女。

でも。俺が出会う前から、既にもう彼氏が居て。


どうにもならない“理不尽”を。



《——「画面から出てきてくれねーかな……おい空もそう思うだろ? 思うよな? 思えっての!」——》



それを忘れさせてくれたのは、隣にいた男友達だった。


バカみたいな会話。

一緒に貢いだゲーセンコーナー。


そんな彼にも。

結局お礼を言えぬまま――



「……さ、佐藤?」

「どした……? 今日なんかおかしいぞ」


「……ああごめん。ちょっとジュース買ってくる」



ああ、考えるな考えるな。

“年上”って俺にとっちゃNGワード。


楽しいこと考えよう。

と、いえば労働! 今日はシフトだやったー! 

しかも店長と! やったー!





「しゃっせー」



とういうわけでinコンビニ。実家のような安心感。実家無いけど!

夕方のシフトでやる事といえば、普通に接客だ。


頑張ったねスーツ女性達、今日は定時上がりで目も生きてるね。



「お支払いIKUCAで。あざした~」



『野菜大体これ一本』&『塩むすび』を購入後、彼女達は恐らく明日も戦場へ。言ってくれたらサラダチキン奢るぜ!



「いやぁ、スーツって良いですね店長」

「えっ!?」

「カッコ良くないですか? 大人って感じで」

「……こ、これから事務所ではスーツで仕事しようかな」

「緊張感出るんで止めて下さい」

「それもそうかあ……」



いつも通り店長と雑談を楽しみながらレジ周りの品補充。ホットスナックである。

……唐揚げうまそー。また居酒屋行きたくなってきた。


そういや優香の合コン場所って鳥侯爵って言ってたな。うらやましー。



「合コンかー……」

「!?!?!?」


「あ。違いますよ、知り合いがちょっとね」

「だっだよね。流石に高校生で合コンは早過ぎるよね」


「……」

「え」



言えない、何回か行ってるなんて。

ただ数合わせだ。


大学生セフレからの救援で行くぐらい。合コンに異性を誘うのってどうなの? とは思ったけど。


彼女達的には、DK男子高校生の知り合いがいるってだけで自尊心が満たされるのかもな。分かる分かる。



「そうすね(ディレイ)」

「今の間、怖いよ!」


「店長は経験豊富そうですね」

「ぇ……前のが初めて……」


「そういや今日は悪い天気ですね」

「そうだね!」



曇天を眺めながら話題を転換。

うーん、バッドコミュニケーション。

彼女には嫌われたくないし、何か良い話題無いかな。


無いか。

昨日セフレと見たパロディAVが面白かったぐらいしかない。タイトルだけね。

ああいうのって会議室で真面目に決めてんのかな。

自分、入社いいすか?



――ピロピロピロ



「しゃっせー」

「いらっしゃいませ!」



ま、そんな話できるわけもなく。

俺が店長に出来るのは、精いっぱい働くのみ。頑張ろー!





「佐藤くーん! もう上がっていいよ!」

「あ。もうそんな時間ですか」


「うんうん。今日は色々やってくれてありがとう!」

「店長の為なら、いつでもライバル店にカチコミ行きますよ」

「えぇ!?」

「はは。冗談……でもないですけど」

「え」

「お疲れさまです」



まだ日は落ちていない、学校で言うなら部活後の時間。


心地いい疲労感。

今日は一人で、映画でも見ながらコーラで乾杯しようかな。

冷凍庫には冷食(唐揚げ)があったはず——



——プルルルルル



「え、優香?」



なんて思ってたら、鳴り響く着信音。

おかしいな。今日合コンのはずなのに。



「しもしも(逆)」

「あっ、佐藤さーん! すいませんいきなり」

「おう。どしたの?」

「いやぁ、実は今日の合コンが……」

「えっ」

「相手方の男の子が一人これなくなっちゃったんですよ」

「そうなんだ」



ま、3対3って言ってたし。

……この流れ、なんか読めた。



「それで知り合いに男の子居たら呼べない? なんて言われたので、佐藤さんにお声掛けを……」

「やっぱり」

「え?」

「良いよ。今から行くわ」

「か、軽!」



色々と軽い男なんで!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る