たとえ私が忘れても、セカイは私を覚えてる

錫音零

第一章 第一話

「世界は記憶と想いで満ちている」ー


 鳥の鳴き声、風のざわめきで目が覚める。ひどい頭痛だ。思考もはっきりしない。

周りは瓦解した石壁に囲まれ、奥には海が見える。ここはどこだろうか。

そもそも、ここで、何を。

思い出せない。わからない。

僕?私?俺?自分の名前も、生まれた場所も、目覚めた場所も、目的も、何もわからない。


ただ、一つ覚えていたのは、何かに会いたいという漠然とした思いだった。

それだけで一歩を踏み出すのに十分だった。


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どこかもわからない、生き方もわからない場所を黙々と歩く、歩く、歩く。

記憶がなくても染み付いた習慣なのか、ある程度の野外の知識はあった。

夜がくれば薪を集め、火を焚き、地面で寝る。

朝になれば、何かを食べ、またひたすら歩く。

何も思わない、何も考えない、だけれど体は進む場所をわかっているかのように歩み

を進める。

5日目の昼過ぎ、村?街?いかんせん頭の中からすべてが抜け落ちているためよくわからないが何かについた。

入口らしきところに行くと、見知らぬ人間に声をかけられた。

???「@skal*#){}”@789,${:#’ndok#p◯△✖️⬜︎,sm’sjms」

 何をいってるのかわからない、きっと自分も前は喋れたのだろうが、今はもう聞き取ることすらできない。

身振り手振りで声をかけた人間が意思疎通をしようと頑張っている。

 歓迎の意と、もう一つ何かを見せろと言っている。

あいにく持ち物は目覚めた時に近くに落ちていたポーチと錆びたナイフだけである。

さっぱりわからず、首を横に振った。

 すると門番は手で待っていろという仕草をすると、ローブを纏った老人を連れてきた。

 手招きされてついていく、のちに教会と教えられたが、その建物の一室に連れてこられた。

 

 身振り手振りでここで寝泊まりしなさいと言っているのだと理解した。

 

最初はほぼジェスチャーでの会話だったが流石に、言語が理解できなくいし意思疎通が取れないのは不便だと考え、老人から読み書きを教わった。老人の名前はパリスというらしい。聖職者だと言っていた。パリスと生活し、言語に囲まれるうちに体に染みつき、だんだん馴染んでいった。

四ヶ月が経った頃には私は一般人と変わりがないくらいにまで喋れるようになった。

 

「マシア、朝だよ起きなさい。」

優しく温かい声に起こされまどろみから目を覚ます。

マシアというのは自分の名前を忘れていたままでは不便だろうとパリスが付けてくれた名だ。道標の神「スルルマシア」のマシアからとり、私の、この先の人生に道標がありますようにと願い付けてくれたのだ。

パリスが用意してくれた朝食をたべながら、他愛無い話をする。

「マシア今日は出発の日だろう?」

「あぁ、そうだった。うん、昼にはここを出るよ。」

「そうか寂しくなるなぁ。」

「色々四ヶ月ありがとう。パリスさんのおかげで記憶は戻らなくても生活できるまでになったよ。本当にありがとうね。」

「いいんだよ、困っている人を助けない聖職者なんていないんだから。」

本当に優しい人だ。朝食を食べ終え、出発の準備をする。

 服、あの時のナイフ、パリスが発行しにいってくれたギルドカード(何に使うかよくわからないが)、簡易食料。元から大した荷物もなかったのですぐ準備し終わった。

 「それじゃあ、いってくるよ。パリスさん。」

「あぁ、いっておいで。もし何かあったら戻ってくるんだよ。ここはマシアの家なのだから。」

 本当に優しい人だ。少しの名残惜しさとともに私は教会をあとにした。


 教会にいるとき、この日のためにいろんな本を読んだ。新聞から、薬草に付いての本、モンスターについての本、魔術についての教本。記憶をなくした私の唯一の救いは知識の吸収が異常なほどに早いということだった。体が覚えているというのもあるのだろうが四ヶ月で必要な知識は習得することができた。体が覚えているのと知識があるのはまた別で、知識がある方が安心感がある。

 ただ四ヶ月の間、様々な本を読んだが不思議なことに、がわたしが求めている誰かに会いたいというのに当てはまるものはなかった。それ以外にも一年と少し前の新聞には魔王をとあるパーティが倒した記事があったのだが、そのパーティに関するものも見つからなかった。ちなみに私が目覚めた場所は、無記録時代の神殿であったらしい。


 現在、私がいるのは6つの大陸の一つ。太陽の神ラートムが最初に太陽をもたらしたとすることから、「ラートムハーゼ」という名がついている大陸である。東に位置しており一番早く日の出を迎える。わたしはそのラートムハーゼの公益と情報の街といわれる「ヘルペーメー」をめざしている。ここから3日弱である。

 とりあえずいい感じの場所を見つけて焚き火の準備をする。持ってきた簡易食料を食べ、床で雑魚寝する。空は満天の星空で見つめている間に寝てしまった。

 なんだか夢を見た気がするが、忘れてしまった。二日目、泉があったので水を補給した。補給してる途中騒がしいなと思っていると、近くにスライムとワーム(とても気色が悪い)のに襲われている商人グループがいた。素材を取り、街でうればすこしだが旅のお金の足しになるだろう。よし、やろう。お金はほしい(本心)

「そこの護衛の人!私が後方支援する!だから前で戦って!」

 護衛二人はうなずくと前に出て積極的に交戦し始めた。ワームは火で炙ればすぐに倒せるのでがスライム達をを護衛の二人に倒してもらう。ふたりとも熟練者なのだろう魔術の邪魔をしない立ち回り、筋力アップだけの支援で事足りそうだ。

 「フランマ!!!!!」

 二人の邪魔をしないようワームを火炙りにする。弱いモンスターだからかみるみる灰になる。ワームの灰の中から唯一燃えない部位が残る。核を守る火袋だ。これを使い燃えない布を作ることができるらしい。ただ刃物には弱いので切込みを入れ核を取り出し無力化する。

 これがお金になるのは信じられない。だってめちゃくちゃ気持ち悪いよ?何かたまに動くし...。商人たちは馬車の修理があるためここでお別れした。

 そのあとは三日目を迎え、途中でワームにあったが形も残らないほど焼き、火袋と核を頂いた。ほんとに無理である。夕方に差し掛かる頃ヘルペーメーについた。


 すごい大きい街である。大陸の中央にあるこの街は活気で溢れている。門には衛兵がおり安全のためチェックをしていた。チェックを終え街に入ると人、人、人、人に酔っていると誰かにカバンを触られていることに気づいた。これは、スリというやつか、、触っているやつの腕をつかもうとしたが逃げられた、逃げた先にいたのはローブを纏った小さい子だった。


              

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