可愛げがほしい?

 立ち去る前に気になっていたことをマークに確認する。


「事件ですか?事故ですか?」

「いまそれを調べています」


 ですよねー。でも。


「落下地点からすると事件っぽいですよね」

「詳しくお聞かせ願えますか?まずなぜ落ちたと?」


 また眼鏡をクイッてしてる。

 あー。余分なこといっちゃったかも。

 言ってしまったことは仕方がないので、説明をする。


「もし転んで頭をぶつけたとしたら、あんなに血が飛び散りませんよね?もっと高くから落ちたらもっと飛び散ると思います。あと血がピってなってる長さとかで高さがわかるらしいです。余談ですが、血って落ちた高さによって形が違うらしいです」


 って中身は大人な少年が言ってた気がする。


「次に落下地点ですが、もし何かの拍子に落ちたとしたらもっと手前に落ちますよね。自分がで飛んだとしたら、逆に遠くになると思います。それに自分で飛ぶならうつふせが多いらしいです。自分で頭から空を見上げてあの位置に落ちるのは至難の技だろうし、第一、二階から落ちてもだいたい死にません」


 って科捜研のまりこがよくコンピューターでシミュレーションしてる、気がする。


「……なぜ、それほど詳しいのですか?」

「そういった物語が好きだから?」

「え゛」


 選ぶ言葉を間違えた。

 完全にドン引きされてる。

 とりあえず、修正を図ってみる。


「事件が起こって謎ときをするってジャンルがあるんです。そのジャンルが好きなんです」

「……そうなんですか」


 そうですよ。

 紅茶が好きな警部の話とか個性的なメンバーなのに、検挙率がいいチームの話とか幽霊が見える青年の話とか……


 修正されてないな。


「とにかくそんな感じで。素人考えなので気にしないでください」


 そこで、はたと気づいた。


 私、悲鳴すらあげてないな。

 普通、あの状況を見たら悲鳴をあげるよね。

 ……今まで生きてて「きゃー」なんて悲鳴をあげたことないけど。


 世の中の女の子が可愛く「きゃー」なんて悲鳴をあげたり、「あー」よろよろ~みたいに儚げに倒れるとか思うなよ。

 血圧を測るとだいたい低すぎて二回測るなのがスタンダードな低血圧なのに、朝礼とかで倒れたことなんて一回もないぞ。


 私に求められても困るけど、もう少し可愛いげがあったらよかったのになぁ。

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