sideアレン リアム 1

 ピラリ、と四枚目の紙をツマミ上げ、レティシアが嬉しそうに宣言する。


「じゃぁ、それで発注するわ」

「え、ちょっと待って。それならこっちの裾を……」


 女子トークが始まる。

 二人で頭を付き合わせて一枚の紙を覗き込みながら話し合いを続ける。

 といっても、レティシアが話した事をアイナが却下するのが多い。

 いい案がでると紙に何かを書き込んでいく。


 やはり、女の子なのだなぁ。

 アイナの調子は、いつもと同じように見えて、纏う雰囲気が柔らかい、ような気がする。

 と、いうのもここで一緒に働くようになり、ちょっとした表情の違いがわかるようになってきたし、彼女自身も表情が出るようになってきた、ような気がする。


 もし、ウォルターがここにいたなら、「わかるようになったっす!!」とかいって、小躍りしているだろう。「ような気がする」なのにあいつはいつでも全力だからな。


「楽しそうですね」


 こそり、と分隊長に話しかけると、


「ああ」


 と、目を細めて嬉しそうに見ている。


 その反応を見て、最近思っていた疑問をぶつけてみる。


「分隊長は、彼女をどんなたち位置で見ているんですか?」

「ん?たち位置?」

「……何て言うか、俺たちの事は部下として接しているじゃないですか?友達とかじゃないですよね。だけど、アイナ様とは部下として知り合っている訳じゃないので、どういったたち位置で彼女の事を見ているのかと思って」

「あぁ。そうだなぁ」


 言いながら腕を組み、視線をさ迷わせている。


「うーん。そうだなぁ。娘ではないな」

「どちらかと言うと団長はそんな感じですね。歳もそんなに離れてないでしょう?」


 彼女が15歳というのが本当なら確か分隊長は、24歳だったと思うので娘ではない。団長は、35ぐらいだと思うのでそちらのが親子だな。


「まぁ、部下っていうより妹って感じかなぁ。実際に妹がいるわけじゃないが、多分そんな感じだ」

「そうですか」


 まぁ、そんな感じだろうな。


 基本的に女性への対応が蔑ろにはしないが冷たい分隊長だが、彼女への対応が柔らかいし、気にかけているのは丸分かりである。


 下手したら周りの女性から嫉妬されそうだがな。


 俺の妹は、どちらかと言うと性格がレティシアよりだから、妹に振り回されてばかりだ。

 だから、妹みたいと可愛がる分隊長の気持ちがイマイチよくわからない。

 俺自身、彼女を妹みたいと思ってないから逆に同じ質問をされても上手く答えられないだろう。


 でもまぁ、俺自身も彼女の事を嫌っているわけではない。

 それが伝わっているかは別問題として……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る