第49話


「『情欲のラスト』まで倒すとはな」

「俺はアイズ達に任せるつもりだったよ」

「は!アイツらに?『槍聖』、『斧王』、『大魔導士』、あと『聖女』までいて倒せなかったんだぞ?お前以外誰が倒せた?」

 夜番でラビオンと2人、飲みながら話をしている。


「俺だって『創世剣ソードマスター』になってなきゃ無理だったからな」

「必然だったんだよ。…なぁ、これからどうするんだ?」

「さぁ?まだ決めてないし、決める必要もないと思うが?」

「そ、そうか!あはは!まだお前たちといれるんだな!」

「…キモいぞ?」

「あ?お前までそんな事いうなよな!!」


 ラビオンと笑いながらそんな話で夜は更けていく。



 40階層、ボス部屋。オルトロス。

「双頭の獣だ!リミ、アイラは長距離で!ネイル!行くぞ!!」

「「「はい!!」」」

 4人で大きな双頭の犬のような化け物討伐だ。

「『ウィル!よろしく!』」

『スパンが短くないか?はぁ…レイ!』

 光のビームがオルトロスの脚を撃ち抜く。

「『フレアボール』」

 アイラの魔法が片方の頭を潰す。

「私も『ロブスラッシュ!』」

 ネイルの技が脇腹を抉り、

「よしっ!っと」

 俺がトドメを刺す。


 ドロップは皮、オルトロスの双剣、魔石だった。


「はぁ、お前ら強くなったな」

「本当よね!よくやったよ!」

 とラビオンとアビーが褒めてくれる。


「さて、宝箱には罠があるぞ!ネイル、やってみろよ!」

 ウリンがネイルにやらせながら教えている。


「やっと終わったね!これでお風呂に入れる!」

「本当に、臭いしね」

「は?私は臭くない!!ね?」

「ん?…あぁ」

「何よ!その間はなんなのよ!!」

「ほら、開いたみたいだぞ?」

 と冗談を言い合えることがとても嬉しい。


「開けますよ!」

 宝箱の中身は最高級ポーションが二つと、雷光の魔宝石。

「これは帰ったらアイラに杖を作るか?」

「うん!嬉しい!」

「あー!またアイラ!ズッこいよぉー!」

「分かった、2人にはマジックバッグな?」

「「やったぁ!」」

「私も作ってもらう」


 はぁ、、とため息が出るが、これくらいがいいのかもな。と少し笑えた。

 

 転移陣に乗って外に出る。

 外は地球の桜に似た木が生えていてピンクの花びらがヒラヒラと舞っている。


「よっしゃ!じゃあ、報告組と準備組に別れるか!」

「準備組はこっちね!」

 アビーが手を挙げると、

「「「「「はーい」」」」」

「って、おい!報告すんの俺とルシエだけかよ!」

 他のみんなは準備組?ってなんの準備だ?


「大丈夫!宴会の準備は任せといて!あと女性陣はお風呂にいってくるから!!」

 なんで全員が分かってるのかわからないが、宴会の準備らしい。


 2人でギルドまで大通りを歩く。

「はぁ、みんな疲れてるのは一緒なのにな?」

「仕方ない、リーダーだしな」


 ギルドに入るなりサーシャに呼ばれて2階の応接室に連れて行かれる。

“コンコンコンガチャッ!”

 ノックから扉が開くまでがとても早かったな。


「良かった!無事帰ってきたんだな!」

 ギルマスのポートが両手を広げながらこちらに来るのでラビオンを押しつけといた。

「な、な、なんだよ!!やめろっての!」

「ん?なんだ、ラビオンか!キモい!!」


「うっっせーー!!ギルマスまでいうなよな!!」

 とふざけるのはここまでにして、

「ギルマス、報告がある」

「…聞こうか」


 俺とラビオンで、ゴテアラ、『情欲のラスト』、『SODスピア・オブ・ディスティニー』について話をする。


「…そうか、ゴテアラがな」

「アイツは男だったよ」

「…まぁな」

 男だろうがなんだろうが、1人でなんでも抱えすぎたんだ。俺らも気にはなってたけど結局は最後にしてやれたくらいだからなんとも言えない。

 虚しいな。


「『SOD』の事は俺に任せてくれればいい。あとは上手い事やってみせる」

「本当かよ?出来なかったからこうなったんじゃないか?」

「まぁ、反省してるよ」

「ならいいな?ルシエ!」

「ラビオン?」

 なんでラビオンが仕切ってんだよ…まぁ、いいけどな。


「『情欲のラスト』は倒せたんだな?」

「そうだ。ルシエが最終的に倒したぞ」

「たまたまだ。最初から『SOD』が全員でかかっていれば倒せたはずだ」

 なんせ主要メンバーが凄いからな。

「そうか、お疲れ様だな」

「あぁ、疲れたよ」



 ギルマスへの報告も終わり、階段を降りる。

「では、通行禁止は解除する。が、50階層より下は今まで通り自己判断だ」

「まぁ、そうだな。だが、また出て来るかもしれないぞ?」

「それも判断の内だな。まぁ、50階層より下にいける冒険者は一握りだからな」

「そう言えばそうだな」

「では、今日はゆっくりするんだぞ?」

「たまには飲みに行こう!じゃあ」

 ギルマスと別れると宿に戻る。


「やっと帰って来たね!おかえり!」

「おばちゃん、ただいま!」

「ただいま帰りました」

 宿の女将さんに挨拶をして部屋に戻る。


「ふぅ…」

 やっと終わった。

 今回は『情欲のラスト』に吸収されないようにする為にポイントを奪ったが、ああするしか方法がなかった。

 死人から取るなんて事は出来ればしたくないな。

 まぁ、そのおかげで『創世剣ソードマスター』まで取れたのだが、、自力もつけないと職業ジョブに踊らされる事になるからな。

 とりあえずこれで『暴食』『情欲』の2匹を倒せた。

 あとは他の人が倒せばいいと思う。

 俺はできるだけ平和に生きていきたい。

 あぁ、今までで一番疲れたな。


「着替えないとな。あとシャワーも浴びないと…」


 そしてリミ達が起こしに来るまで俺は夢の中に入っていった。

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