第45話


 37階層を進んでいく。何処かでゴテアラに追いつくはずだと探しながら進んでいると、

「ゴテアラ?!」

 遠くに見えるのはゴテアラとなんだ?人か?


「おーい!ゴテアラ!!」

 声をかけるが返事がない!何か揉めているようだ!

「く、クソッタレ!!」

 走って近づくとそれは異形の化け物だ。

 身長は2メートル以上だろう女の蠍人?と言っていいものか?もし蠍人であればあれが『情欲のラスト』に違いない。



『あははは!弱い!弱いわよ!!』

 背中を刺されたゴテアラは宙に浮いていた。

「け、剣を…」

『もう!可愛いわね!ほら、この剣でどうするの?』

 蠍人はゴテアラをいたぶって遊んでいる。

 剣をゴテアラに渡すと両手を広げる。

『さぁおいで」

「ウォォオォォ!!!」

 剣をなんとか振り上げるゴテアラだったが、

「ぉ…あ、、あは、きもぢいぃ」

 ゴテアラは恍惚の表情を浮かべる。

『そうそう、さぁ、気持ちいいまま死になさい』

『ラスト』はゴテアラを抱きしめると頭から齧り付く。


「やめろォォ!!」

 追いついたラビオンが大剣を振り下ろすと『ラスト』は砂に潜り隠れてしまう。


「クソッタレ!!」

 蠍人は見当たらなくなってしまった。

「あれがそうか?」

「…そうだ、俺たちはあいつにやられたんだ」


『ストロミー』のみんなも蠍人に一回会っている。その時は転移陣の罠でなんとか逃げ切れたのだが、

「あいつゴテアラを喰ってやがった!」

「あぁ、あいつは…俺たちを連れて行かなかったな」

「クソッ!」


 俺たちは消えた『情欲のラスト』を追わないことにした。それよりも早く外に出てこのことをギルドに報告しないといけない。

 ゴテアラは1人でなんとかしたんだ。

 操られていたはずなのに抗っていたのだろう。

 

「さっさとこの階層を抜けるぞ!!」

「分かってる!急ごう!」


 俺たちは37階層を抜け38階層を進む。

 砂漠は進んでいるのか分からなくなるが、ラビオン達ベテランがいるから信じて進む。


 休憩もそこそこに出来るだけ急ぐ。邪魔なモンスターは斬り捨てて。


 だが、そう簡単に逃げられるものではなかった。

 

『あー、お腹すいた…』

 砂塵とともに現れ、そう呟く。

 その姿は蠍人と呼ぶのに相応しい。


 目の辺りから後ろに甲殻があり、そのまま後ろ髪のように大きな尻尾の様で、先端に大きな尾節がある。身体も女性らしいが胸から甲殻に覆われており、足先はハイヒールの様になっている。そして腕は大きな鋏になっていて異様な風体の蠍人の女性だ。


 俺たちは逃げようと思ったが、異様なオーラを放つこの蠍人から目を離すことができない。

 目を離すとたちまち殺されそうな雰囲気を感じて身体が動かないのだ。


『ねぇ、なんで黙ってるのさ?何かあるでしょ?それとも怖くて口も開けないの?』


「…お前が『情欲のラスト』か?」


 なんとか口を開くラビオンがそう聞くと、

『そうそう、ちゃんと話ができて偉いじゃない。私が『ラスト』ってなんで知ってるの?』


「有名だからな…それより何故こんな階層にいるんだ?」

 俺もなんとか口を開く。

『餌がないから…ないなら動くしかないでしょ?』

 口を歪に開くと唇の奥はギザギザの歯が見える。


“ヒュッ”

“ガィンッ!!”

 といきなり『ラスト』の尾節が飛んでくる。ワルツが盾でなんとかガードしたが、そのままだとウリンに当たっていた。


「な、何をする!」

『あら、ごめんなさい。お腹が空き過ぎて勝手に手が出ちゃったわ』

 ラストが頭を上げると尾節は戻っていく。

 油断したつもりはないが、早過ぎるな!


「リミ、呼び出しておけよ」

「う、うん、『来て、ウィル・オ・ウィスプ』」

『ぅ、、、ん。はぁ、ようやく僕の出番かい?』

 光の精霊、ウィル・オ・ウィスプが背伸びをしながら出て来た。若い青年の様な姿だ。


『へぇ、精霊ね?久しぶりにみたわ』

『これはまた大変だな。厄災じゃないか』

 知っているらしいウィル・オ・ウィスプは『ラスト』を睨みつけ、そして光を掌に集める。


「覚悟決めろ!こいつからは逃げられねぇぞ!」

 ラビオンが叫ぶと、全員戦闘体制になる。

『そう!そうよ!熱いわねぇ!私といいことしましょうよ!』


「ウォォオォォ!!」

 ラビオンは大剣を振り下ろす。

 だが『ラスト』はラビオンの大剣を片手で受け止めると、すぐに尾節で針を刺そうとする。それはワルツが盾で『シールドバッシュ』で弾く。


 すぐにラビオンは大剣を押し込み鋏を斬り裂くと後ろに後退する。

「いくよ!『フレアバースト』」

 アビーの極大魔法が『ラスト』を包む。


愚者火イグニス・ファトゥス

 ウィル・オ・ウィスプの魔法が燃え盛る『ラスト』を青白い炎でさらに包む。


『キャアァァァァアァァァァ!!』


「今のうちに!」

『ダメだ!背を向けるな!』

 ウィル・オ・ウィスプが叫ぶ。

 後ろを向いたウリンに尾節が伸びるが、俺が剣で弾くと尾節は戻っていく。


『あぁ!惜しかったわね!あと少しだったのに!』


 涼しい顔で炎の中から出てくる『ラスト』はラビオンに斬られたはずの鋏が治っている?


 隙をみて『鑑定』をする。

 ポイントが相当貯まっていたので全て奪っておく。たぶんこのポイントを使って『再生』をしていた様だ。


『…なにをした?そこのお前!何をしたんだ!!』

「分かるんだな、まぁ、分かったところでだがな」


 『ラスト』は『グラトニー』と同じで取り込んだ人間のポイントを奪えるようだ。


 これ以上好きにはさせないがな!


 

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