第42話
迷宮街ブランドー・ダンジョン31階層
「凄い…」
「…うわぁ」
「おいおい、こんなところで呆けてたらモンスターに殺されるぞ?」
ラビオン達は笑っているが、俺たちは感動していた。
言葉にならないその光景は、30階層から下の上級冒険者と言われる一握りの者達が眺める景色。
ダンジョンの中なのに空があり、見渡す限りの大草原が広がっている。
風が吹いて一斉に靡く草、雲が動き太陽の輝きを隠す。
「ほらほら、そんなに見惚れてないでそろそろ動くわよ?」
「はい!にしても凄いですね!」
「そうだな、ちょっとしたアトラクションだ」
「ん?アトラ?」
「何でもない」
つい地球の言葉が出てしまったが、それくらいここがダンジョンの中だとは思えなかった。
「よし!ここはグラスウルフや、レッドホブゴブリンなんかが出てくる。群れで襲ってくるから気をつけろよ?」
「はい!でも今までより弱そう?ですよね?」
ネイルの言う通り、名前だけ聞くと今までよりも楽そうだが、
「この階層は属性持ちが多い、あまり舐めてかかると痛い目に遭うぞ?」
なるほど、属性持ちが群れで襲ってきたら危ないかもしれないな。
「分かった!気をつけるぞ!」
「「「はい!」」」
「来た来た!うわぁ!何匹いるの?!」
「『サンダーストーム』」
「行きますよ!」
レッドホブゴブリンの群れに遭遇した俺たちはその数の多さに慌てて、アイラが範囲魔法を放ち、その取りこぼしをみんなで叩く。
「あちっ!こいつファイヤーボールを撃ってきます!」
「気をつけろ!リミは弓で遠くの敵を狙ってくれ!」
「任せて!!」
ラビオン達の言った通り、やはり属性持ちは厄介だな。
「なかなか頑張るな?俺らに任せてもいいぞ?」
「いや、これくらいは余裕で倒せないとな!」
ラビオン達の助けを借りるまでもないだろ。
このモンスターの群れは32階層と続き、33階層に入ると大型のモンスターが出てくる。
「わわっ!デカい!!」
「ブラキオスだ。まぁ見てるんだな!」
とラビオン達がお手本を見せてくれるらしい。
「ガハハ!さぁ来い!!」
“ガィンッ!!”
と音を立ててガードするワルツは首長竜のようなブラキオスの突進を押し負けずに弾き飛ばす。
「よし!『アビスダガー』!」
ウリンがスキルで後足を攻撃すると腱を切られたブラキオスは体制を崩す。
「さぁ!いくわよ!『フレアストーム』」
アビーの極大魔法でブラキオスはドロップになり消えてしまった。
「お、お前ら、ルシエ達の前だからって張り切りすぎだろ!」
ラビオンが大声で叫ぶ。
「そうかな?」
「ガハハ、いつもと変わらぬ」
「そうよね!」
「いやいや、俺の出番がねぇじゃねえかよ!アビーもなんだ!大人気なく極大魔法なんか使いやがって!いつもならMP温存とか言ってるじゃねーか!!」
ラビオン達は大人気なく喧嘩をしてるが、流石はBランクのパーティーだ。3人であのデカいモンスターを倒せるのだからな。
ダンジョンにも夜が来るようで夕焼け空に変わり、野営の準備をするためにある場所に行く。
ここにもセーフティーゾーンがあり、ベースキャンプのような開けた場所がある。そこで今日は夜を明かす。
「いやぁ、ルシエがいるといつも以上にドロップが拾えるからいいな!」
焚き火を囲みながら飯を食べる。
ブラキオスのような大型のモンスターのドロップはやはりデカいのでウリンがマジックバックを欲しがる気持ちがわかるな。
まぁ、俺は収納があるから全て持ち帰るつもりだが。
「ガハハ!いつもはウリンをドロップから引っ剥がすのに苦労するからな」
「そうね、捨てるのが勿体無いのはわかるけど」
「分かるならせめて少しでも持って帰ろうとする努力をだな!」
ワルツやアビーに言われて怒るウリンだった。
楽しい食事が終わると交代で見張る。
ラビオン、リミと一緒になった。
「久しぶりだな!俺たちの出会った頃を思い出すな!」
「あはは!ラビオン気持ち悪い!」
「なっ!リミだって久しぶりだろ!」
「いやいや、キモいよぉー!」
「こら!待て!このヤロゥ!」
ラビオンはリミを追いかけて行った。
まぁ、言い方が悪いな。
そして33階層での朝を迎える。
「凄い数のドロップだね!」
リミが言う通り、交代してからナイトウォーカーが襲ってきた。
ウリン、アビー、ネイルで遠くに連れてって倒したらしい。
起こされたラビオンと俺は少々寝不足気味だ。
「ふわぁあぁぁぁ、さすがに眠いな」
「まぁ、こんな日もあるさ」
ナイトウォーカーは音もなく忍び寄ってくる。
やはりダンジョンは気が抜けないな。
今日も33階層の大型モンスターを倒しながら先に進む。
34階層に進むと今度は空を飛ぶワイバーンが襲ってくる。
リミの弓、アイラの魔法で落として倒すしか方法がない。
「よし!ここは活躍するよ!」
「落とした後は任す」
と2人も気合いが入る。
35階層でまた一夜を過ごすことになる。
やはり34階層で時間がかかる分しょうがない。
「まぁ、最初はこんなもんだ。これでも早い方だと思うぞ?」
「そうか。ラビオン達もか?」
「俺たちは探り探りだったからもっと時間がかかったぞ」
俺たちはラビオン達がいるから出現モンスターなどを教えてもらっている。
「私達はラッキーだったね!」
「とても助かってる」
「そうですね!さすが先輩冒険者です」
皆の言うようにここまで順調にダンジョンを進めるのはラビオン達がいるからだ。
「ガハハ!なんか照れるな!」
「それより追っかけて来てるんじゃない?ダンジョンから出たらどうするの?」
『SOD』は追いかけて来ているかは分からない。ただ巻き込まれるのを回避する為にダンジョンに逃げ込んだが、
「最初はそれが原因だったが、ダンジョンを進めるのは俺たちの成長の為だからな」
だから今はダンジョンに集中したい。
「だな!まぁ、そいつらのことは置いとけばいい」
「そうね。それにしてもなんでルシエを?」
「さぁ?俺にも分からない」
目的がよくわからない。スキルを当てにしているなら見当違いだろ。
「『情欲のラスト』討伐のためと言われたが、本当の目的は別にある気がする」
焚き火を囲みながらそんなことを話し、ダンジョンでの2日目を過ぎる。
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