第13話


 後ろの荷台にリミとネイル、女三人、あと縛られた男が四人だ。

 結局男達は走っては着いて来れなかったから後ろになんとか乗せた。


 かなり狭いだろうが、仕方ない。

 アイラは俺の横に座る。


 爽快に飛ばしてるブラハムは今までと違うのを実感しているような走り方だな。

「ちょ!早くない?」

「ブラハムも無理に走ってないから大丈夫」

 まぁ、早く走れることが嬉しいのだろう。

 いつもより重いのにそれでも普通より速い。


「リミ、それより何人くらい仲間がいそうなんだ?」

「それは聞いた。Bランク冒険者のボブってのが主犯みたいね。その下っ端は全員と思っていいみたい」

 ランクBか…ちょっとまずいか?

 格上相手にするつもりでいかないとな。


「分かった、そいつを何とかしないとな」

 俺はスキルツリーを出すと、奪ったポイントでいつもと違うスキルを選んで行く。

 格上なのだからこちらも策を練らないとな。

「Bランクよ、一筋縄では行かないわ」

「だな、とりあえず兵士に話をして捕縛してもらうしかないか」

 兵士の中に仲間がいないことを祈るか…


 ブラハムは街道を走り、他の馬車を追い抜いて行く。


 街の門にはまだ明るいうちに着いた。ここは伯爵領のようでとても大きな街だ。

 馬車は途中で置いてきた。ネイル達に男どもを見張る様に言ってあるので大丈夫だろう。


「あの子達だけで大丈夫?男達を殺したりしないかしら?」

「まぁ4人とも冒険者のはしくれだろ?」

 リミは心配しているが、まぁ、その辺もネイルに言い聞かせてあるので大丈夫だろう。


 並んでいる間に話をしておく。

「とりあえず街に着いたら中に入って衛兵の詰所に行くぞ」

「ん?門兵には言わないの?」

「仲間の可能性がある」

「アイラの言う通りだ。門兵は信用出来ないからな」

 慎重になって損はないからな。


 ようやく門を潜り街の中に入ると衛兵の詰所を探す。

 

 伯爵の館に続く門の前にあるらしいのでその場所に行くと丁度兵士達が集まっていた。

「この中の一番偉い人はどこにいる?」

「なんだお前らは?兵士長殿なら」

「私だがなんだ?」

「へ、兵士長殿!?」

 髭を蓄え、鎧を着た真面目そうな男が前に立つ。

「話があるので聞いてもらえるだろうか?この街のことなのだが」

「…いいだろう、だがつまらぬ事なら捕えるぞ?」

「それでいい」

 とりあえず話を聞いてもらえる様だな。

「分かった、部屋を用意しろ!」

 と言って兵士を動かすと、着いてくるように言って背を向け歩いて行く。


「本当なのか?それはまずいな」

 部屋は質素でテーブルと椅子だけがある。兵士長は椅子に座り話を聞くと難しい顔をしている。

「街の外には俺の信頼できる奴を送って確認を取ろう」

「そうしてくれると助かる、で?動けるのか?」

「いや、すぐには無理だな。ギルド内は街の管轄外だ。外に出て暴れでもしてくれれば捕える事はできるが…」

 やはりギルドは組合であり、国を跨いで存在するので迂闊に手は出せないか。

「分かった、では俺たちで動くのが早い様だな」

「すまぬがこちらも出来ることはしよう」


 少しは期待していたが仕方がない。

「分かった、Bランク冒険者だからこちらが負けたら数で何とかしてくれ」

 できれば最初から手を貸してくれるのがベストなんだが、そうはいかないようだ。

 なんとかバレない様に外に連れ出すか、手傷を負わせられればいいのだが。


「分かった。我らも手が出せればいいんだが…ギルドの周りは固めておく、そのボブと言う冒険者を外に連れ出してくれればなんとかしよう!だが無茶はするんじゃないぞ?」

 衛兵隊長がそう言ってくれる。

「分かった、その様に動いてみよう」


 街はもうすぐ夕方だと言うのに店は賑わっていて大通りは活気で溢れている。

 こんな街で何故のうのうと盗賊まがいのことが出来るのだろうか?

 やはりランクが高いのはギルドからも信頼されていると言うことだろうか?


 大通りに面した三階建てのでかい建物が冒険者ギルドのようだ。


 まずは俺一人でギルドに入っていく。

 中に入ると併設された食堂で酒を飲んで騒いでいる奴らがいる。

 受付に行くと冒険者カードを出して静かにしてもらい、ボブがどれかを聞くと騒いでいる中でこちらを見ている奴だった。


「おい!俺に何か用があるみたいだな?」

 早速作戦は失敗か?

 一気に辺りが静かになり、張り詰めた空気に変わる。


「さぁ?何のことだか?」

 とりあえず話を有耶無耶にする。

「へぇ、よく言うぜ。俺に用があるんだろ?」

 ボブはもう立ち上がってこちらに向かって来ている。大剣を軽々と持つその巨体はBランク冒険者の貫禄を見せつけてくる。

 

「グッ!!」

 まだ間合いに入ってないと思ったら、後ろから刺された?

「クククッ、よくやったメアリー」

 まずいな、受付まで加担してるのか。

 刺された傷が痛む。

「『ヒール』」

「アイラ?!」

 アイラの回復魔法だった。

「私もいるわよ!『来て!ウンディーネ』」

『なぁに?あら?人間同士の争いかしら?』

「そうよ!いくわよ!」

 とリミまでもう来ている。


「お前のパーティーか?いい女がいるじゃねぇか!」

「『パリィ』っとに!女を見ればサカるのは下っ端と一緒かよ」

 と振り下ろされた大剣を弾く。

 こうなったら仕方ない、なんとか外に出すか!


「ほう、なかなかやるじゃねぇか!どうだ?仲間にしてやろうか?」

 と大剣を地面に刺すとそう言ってくる。

「断る」

「後悔するなよ?」

 と言い大剣を持つと『回転斬り』『斬り上げ』『振り下ろし』と連続攻撃をしてくる。

 こちらも避けて、後退し『パリィ』をするが、押し切られ吹き飛ぶ。


「ルシエ!!ウンディーネ!」

『ウォーターバレット』

 水の弾丸がボブを襲うが大剣でガードされる。


「ハハハッ!そんな攻撃じゃ足りねぇなぁ!お前ら女は男の言うこと聞いてりゃいいんだよ!!」

『溜め斬り』を繰り出すボブの攻撃を『パリィ』するがやはり押し負けて吹き飛ぶと、アイラから『ヒール』が飛んでくる。

「ケッ、情けねぇ!女に助けてもらうとはな!」

「グッ!俺らはパーティーなんでな」

 上手い事立ち回るもんだな、外に出られない様にしてくる。

「かかってこいよ!」

「あぁ!言われなくても!」

 『エアリアルラッシュ』で攻撃をするがなんなくガードされると、ただの剣を振るって来るので『パリィ』で弾く。


「おぉ!強い強い、ハハハッ!おら、どうした?こんなものか?」

「くっ!ま、まだだ!」


 ボブは本気ではなく遊んでいる。

「『マジェスティブレード』!」

「ウオッ!っと、それが一番の技か?なんだよ、大したことねぇじゃねぇか!」

 ボブの胸当てに傷をつけるのがやっとのようだ。それだけレベル差があると言うことか。


「お前じゃ勝負にならねぇようだなぁ!ハハハッ!じゃあ、そろそろ死ね!」

「ウンディーネ!」

『ウォーターカッター!』

 水の刃がボブにぶつかるがやはり少しのダメージしかないようだ。

「サンダーストライク!」

「ウガァァァァ!!!」

 アイラが雷の魔法を放つと、濡れたボブは感電したようでダメージが入っている。


「『マジェスティブレード』!」

「ガァァ!!く、クソッ!」

 俺の技も何とか入ってボブが片膝をついた。

「オラァァァァ!」

「ウギャアァァァァァ!!」

 ボブは他の冒険者を掴み盾にする。

「俺の為に盾になれたんだ!嬉しいだろ」

 盾にした冒険者を後ろに捨てると、笑い出す。


「ハハハッ!今のが最後のチャンスだったな!『タックル』」

「ウグッ!!」

 俺は空中に浮かされる。

「これが強者の技だ!『ストライクブレイク』!」

 上段からの溜め斬りだった。


「キャアァァァァ!!」

 リミの悲鳴が響き渡る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る