第2話 すれ違い
翌朝、教室の自分の席に座った俺は、遥に話しかけようか迷っていた。
何せ彼女のまわりには女子達がたくさんいるせいで話しかけづらいからだ。
「おーっす、大樹!なに水瀬を見つめてんだよ!」
「ゆ、
俺の席へと近付いて、明るく声を掛けてきたのは、中学の時からの腐れ縁の仲である
サッカー部に所属していて、よくモテる。
「もしかして水瀬と何かあったのか?」
さすが夕夜……勘の鋭い奴め。
「ま、まぁな……。昨日久しぶりに遥と喋ってな。何かよく分からないけどきれられてさ…」
「へぇ~、あの水瀬がねぇ……。そういえばお前ら幼馴染みのくせに全く話さないよな」
「何かよく分からないけど避けられているみたいでさ……」
「あぁ~確かにな。わざと大樹に近付かないようにしてるよな」
「そうそう。でもあいつはいい奴だからさ、また小学校の時みたいに戻れるといいけどな……」
気が付くと、遥がこちらを見ていた。しかし目があった瞬間、すぐに思いきり目を逸らした。
そして何事もなく友人達とお喋りを続けた。
ちくしょう……いったい俺が何したって言うんだよ。
放課後。
部活に行く夕夜と別れて、図書室で本を読んでいると、妹からメールが届いた。
『送信者:ひかり
本文:何やってるのお兄ちゃん!今日も遥ちゃんが待ってるよ。早く帰ってきて!』
マジかよ……今度は一体何の用だよ……。
それから俺は急いで家に帰った。
リビングに入るとひかりと遥が待っていた。
「お兄ちゃんおっそい!!せっかく今日も遥ちゃんが来てくれたのに何してたのよ!」
「図書室で本をな…?…それに遥が来てるなんてさっき知ったんだよ?」
「と・に・か・く!お兄ちゃんは遥ちゃんとしっかり話し合う事!じゃ、遥ちゃん。気が済むまで話してていいからね!私は黙って夕飯作っとくから」
「うん……。ありがとう、ひかりちゃん」
俺達は二階の自室に移動した。
小学校の頃はここでよく遊んでいたが中学以降、この部屋に遥が入った事はない。
今後もないだろうとばかり思っていたのだが、まさかこの日が来ようとは。
二日前から疑うような事ばかりだ。
俺の部屋は八畳間。
家具はベッドと机の他には小説や漫画等を収納した本棚がほとんど場所を取っている。
俺はベッドに腰かけ、カーペットの上を指差す。
「そこ座って」
入り口の前で立っている遥を促し、そこに座らせる。
「「……」」
ところが遥はいつになっても俺とは反対方向を向いたまま黙っている。
「…あのなぁ、そういうのはもうやめようぜ?」
沈黙に耐えきれなくなって俺の方から声をかける。
しかし遥はまだ何も喋らない。
「俺に話があるんだろ?言いにくいのか分からないけど、とにかくはなしてくれよ。それに俺達、元々気楽に話せる仲だったはずだろ?」
「……そうだね。だけどさ、それは昔の話でしょ?今と昔は違うのよ」
「……っ!?違わねぇよ!!俺は今でもお前を友達だと……!!」
やっと喋ったと思ったら、何て事を言い出すんだこいつは。
「ふぅん……?だからあたしの事を誰にも言わなかったの?逢坂にもひかりちゃんにも……?」
「そ、そうだよ。言っても信じてもらえないっってのもあるけど、やっぱりお前を裏切りたくなかったんだよっ!!」
「……そっか。ありがとう」
遥はフッと笑った。
「……ぇっ!?」
な、なんだよこいつ。急に素直になりやがって…!
「だけどあたしとあんたはもう友達じゃない。大体、高校生にもなって幼馴染みと仲が良いなんて可笑しいじゃない?」
遥は冷たい目でそう言った。
……なるほど、今までこいつをつき動かしていたのは、そのくだらない信念だったんだな……。
「はぁ…ほんとくだらねぇ…」
「……は?」
遥は更に冷たい目でこちらを睨む。それに怒りのためか、顔が紅潮し始めている。
「下らないって何よ!あたしは……っ!!もういい、帰るっ!」
物凄い剣幕で怒鳴ったと思ったら、勢いよく立ち上がって部屋を出ていった。
下で遥とひかりの話し声が聞こえたかと思うと、ドタバタと階段を駆け上がる音がした。
「ちょっとお兄ちゃん!?遥ちゃん泣いてたけど、どういう事!?」
ひかりは相変わらず遥の事になるとすぐ怒る。
普段は大人しい奴なんだけどなぁ…。
「どういう事も何も俺自身、何がなんだかさっぱりでよ…」
「どうせお兄ちゃんがまた遥ちゃんを怒らす様な事、言ったんでしょ!」
どうせって決めつけんなよ……。
「そんな事言ったって、俺にも言い分ってものがあんだよ」
「も~仕方ないなぁ。今度会ったら絶対謝ってよね!!」
ひかりのあまりの剣幕に、俺は抵抗を諦める。
「.......分かったよ。謝ればいいんだろ……謝れば」
なんだってんだよ、本当。
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