第9話 影の中の手がかり

アリスは翌朝、普段通りの生活を装いながらも、心の中には深い不安が広がっていた。学校の廊下を歩く彼女の目は冷静でありながらも、周囲の生徒たちの視線に敏感になっていた。誰もが彼女を疑い、何もかもが彼女を指さしているように感じられた。


午前の授業が終わると、アリスは再び図書館に向かうことに決めた。前日、奇妙な音がした場所の近くで何か手がかりを見つけるかもしれないという期待を胸に、彼女は図書館の一角に辿り着いた。


図書館の片隅には古い書物が並べられており、アリスは慎重にそれらを調べ始めた。彼女は古代の魔法に関する文献に興味を持っており、特に最近の事件と関連があるかもしれない古い魔法についての情報を探していた。


その時、彼女の目に一冊の古びた本が飛び込んできた。本の表紙には「魔法の迷宮」と題されたタイトルが書かれており、アリスの興味を引いた。彼女はその本を開き、ページをめくりながら読み進めた。


「これが…」アリスは呟いた。そこには、失われた魔法の道具や、それらがどのように利用されてきたのかについて記述されていた。また、迷宮の中で失われたアイテムがいくつか記載されており、その中にアリスが盗まれたとされる道具に似たものが含まれていることがわかった。


「これが何かの手がかりになるかも…」アリスは心の中でつぶやき、ページをじっくりと読み進めた。


その直後、アリスは図書館の奥から静かに近づいてくる足音に気づいた。振り向くと、そこにはクラウスが立っていた。彼の顔には険しい表情が浮かんでおり、アリスに対する視線には冷ややかなものがあった。


「アリス、君がこんなところにいるとは思わなかった」とクラウスは言った。その声には明らかに警戒心が含まれていた。


「クラウス、ちょうどいいところに来たわ。これを見てほしいの」とアリスは手に持っていた本をクラウスに示した。


クラウスは本を一瞥し、眉をひそめた。「魔法の迷宮?それがどうして君に関係あるんだ?」


「もしかしたら、最近の事件と何か関係があるかもしれない。ここに書かれていることが、私の道具の行方に関連しているの」とアリスは真剣な表情で説明した。


クラウスはしばらく考え込んでから、「わかった。君の言うことを信じることにしよう。でも、この件については慎重に扱う必要がある。何か大きな陰謀が絡んでいるかもしれない」と答えた。


その後、アリスとクラウスは本を持って図書館を後にし、アリスの部屋で再び話し合うことに決めた。クラウスの協力を得られるかもしれないという希望を抱きながら、アリスは彼と共に再び調査を続けることになった。


アリスが部屋に戻ると、彼女は自分の部屋の隅に不審なものがないか再び確認し始めた。その時、彼女は部屋のクローゼットの奥に何か光る物体を見つけた。それは奇妙な形をした古い鍵だった。アリスはその鍵を手に取り、心の中で疑問が募る。


「この鍵は一体何のためのものなのか…?」


その問いに答える手がかりを見つけるため、アリスは再びクラウスと共に調査を進める決意を新たにした。彼女の心にはまだ疑念と恐怖が残っていたが、真実を追い求める強い意志は変わることがなかった。アリスとクラウスは、鍵が導く先に潜む秘密に迫るため、次なる手がかりを探し始めた。

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