第17話 リナの過去

オンラインコミュニティ「感情のシェアリング」が順調に成長を続ける中、あきらは日々の活動に充実感を感じていた。コミュニティのメンバーが自分の感情と向き合い、少しずつ前向きに進んでいく姿を見て、彼自身も大きな励みを得ていた。


そんなある日、リナがふとした表情で思い詰めた様子を見せたことがあった。あきらはそれに気づき、心配そうに彼女に声をかけた。


「リナさん、何か悩んでいることがあるんじゃない?いつもと少し違うように見えるけど…」


リナは少し驚いたような表情を見せたが、すぐにその顔を緩め、微笑んだ。「あきらさんには何でもお見通しね。でも、そうかもしれないわ…」


リナはしばらく黙っていたが、やがて重い口を開いた。「実は、私も過去にいろいろなことがあって、それをずっと抱えたままここまで来たの。感情日記を書き始めたのも、自分の感情を整理するためだった。でも、最近その過去がまた頭をよぎることが多くなって…」


あきらはリナの話を静かに聞いていた。リナがいつも明るく前向きで、他の人を支えてきた姿を知っているからこそ、彼女の抱える痛みを感じ取った。


「リナさんも、ずっと頑張ってきたんだね。でも、その痛みを誰かと共有することで、少しでも心が軽くなるなら、話してみるのもいいかもしれないよ。僕で良ければ、いつでも聞くよ。」


リナはその言葉に少しだけ微笑み、「ありがとう、あきらさん。でも今日は、私が自分で整理する時間が欲しいの。」と答えた。


あきらはその言葉を尊重し、「わかった。リナさんが必要な時は、いつでも僕がそばにいるからね。」とだけ伝えた。


その夜、リナは自宅で感情日記を開き、過去の記憶と向き合うために言葉を綴り始めた。彼女の過去には、家族との関係や、友人との別れ、そして自分の将来に対する不安が混ざり合っていた。そのすべてが彼女の心に影を落とし、今も彼女を悩ませ続けていた。


「今日はあきらさんに過去のことを話す機会があったけれど、まだ心の準備ができていなかった。自分でも整理できていないことがたくさんある。感情日記を書くことで、少しでもこの重荷が軽くなればいいのだけど…。」


リナはそう書き綴りながらも、自分の中で何かが変わり始めているのを感じた。あきらの支えがあることで、少しずつでも過去と向き合う勇気が湧いてきたのだ。


数日後、リナは再びあきらに会った。彼女は少し落ち着いた様子で、あきらに感謝の気持ちを伝えた。


「ありがとう、あきらさん。あの日、あなたが話を聞いてくれると言ってくれたおかげで、自分の気持ちを整理することができたわ。まだ完全に解決できたわけではないけど、少しずつ向き合っていこうと思う。」


あきらは優しく頷いた。「リナさんがそう決めたなら、それが一番だと思うよ。無理せず、自分のペースで進んでいけばいい。僕もこれから一緒に歩いていくから。」


リナはその言葉に安堵の表情を浮かべ、二人は再びコミュニティの活動に力を注ぐことを決意した。


その夜、あきらは感情日記に今日の出来事を書き綴った。


「今日はリナさんと過去について少し話をした。彼女もたくさんの痛みを抱えながら、それでも前向きに生きてきたことを知り、僕も彼女に支えられていることを実感した。これからも、お互いに支え合いながら、少しずつ前に進んでいこうと思う。」


その投稿にも、多くの読者からの温かいコメントが寄せられ、あきらは自分とリナが新たな挑戦を乗り越えようとしていることを感じた。


あきらとリナの新たな一歩は、また一つ確実に前進していた。過去の痛みを抱えながらも、二人はますます自信と希望を持ち続けていた。そして、その希望が、これからの未来を明るく照らしてくれると信じていた。

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