第255話 【フィオナ視点】聖女救出作戦開始!

【フィオナ視点】


龍王様は空間魔法を使えるということ。

そして空間魔法には転移の魔法と同じような魔法もあるらしい。

死の山脈、リッチの城へも直接移動できる。

移動方法についてはクリアされた!


気になるのが小早川姉妹と大谷君だ。

きっと彼らも家族や友達を心配している。

そして、救出したいと思っている。

彼らに事情を話しておきたい。


龍王様の空間魔法で、ボールベリホルム魔王国とバダンシュヴァール神国へ人を派遣した。

魔王国には小早川姉妹と面識のあるリネットちゃん、神龍のエッカルードさんが転移した。

神国には増田君と長束さんの二人が転移した。

神国からの移動は赤龍グンヴォルイエオリさんに手伝ってもらうことになっている。


もう一つの問題。

救出メンバーだ。

私、レティちゃん、レアちゃんは確定ね。

エルリック君とフレデリカちゃん、ニナちゃんも行くよね。

亘理君と莉乃ちゃんは必須。

イザベルちゃん、デニースちゃん、ミラベルちゃん、シドニー君も手伝ってくれる。

やっぱりルー君とティーレちゃんがいないのが痛い。

モンタギューさんとウィリアム君は勝手についてくる。

マイラちゃんとかクリフ君、狩人のアランさんとかも行きたがっている。

アーヴィちゃんは狩人の人たちとも仲が良かったらしい。

でも、マイラちゃんたちは村に残ってもらって、こちらの防衛をしてもらうことにする。


メンバーは十二名。

この人数を移動できるの?


「まったく問題はないのじゃよ。よいしょっと、な」


龍王様が両手を空間に突き刺す。

そして空間を左右にこじ開ける。

無理矢理な感じ。

力技?

縦に2メートル、横に1メートルほどのひし形に空間が裂けている。

その向こう側は歪んでいて見えない。


「では、行くかの」


神龍様は気楽にその裂け目に入った。


「ほっほっ。さすが、さすが。龍王とはすごいものじゃな」


モンタギューさんが続く。

おじいちゃんたちが元気だよね。

マイラちゃんと抱き合っていたはずの、ウィリアム君も無言ですでに入っている。

私たちがメインじゃなかったっけ?


「じゃあ、行くよ。みんな!」


気合いを入れる。

ルー君が帰って来たときに、アーヴィちゃんがいなかったら、きっと悲しむ。

私たちだってアーヴィちゃんがいなかったら嫌だ。

ルー君がいないんだ、私が、私たちが頑張るんだ。

私たちで家族を救うんだ。

さあ、救出作戦開始だ!!



空間の裂け目から出たところ。

眼前に岩山が見える。

この季節だけど、山のてっぺんの方はまだ雪が残る。

空は灰色の雲に覆われている。

山の雪の白色が、空の雲の灰色に溶けて、境目があやふやになっている。

山から冷たい風が下りてきて、肌を突き刺す。

あの中腹にリッチの城があるらしい。


え……

リッチの城に直接転移じゃなかったの?


「どうやら転移を制限されているようじゃな。儂の空間魔法を拒むとは。なかなかのもの」


神龍様は感心したように長い髭を撫でている。


「そしてお出迎えもおるようじゃぞ」


神龍様の視線の先。

人間の一団が見える。

百名程度か。

しかし、異様な雰囲気だ。

女性の兵士。

彼女たちは、細身で、ボブ程度の髪の長さ、灰色の髪、灰色の瞳。

手には両手持ちの大剣。

顔がレアちゃんに似ている。

だけど無機質にしたような顔。

そして特筆すべきは、彼女たちが全員同じだということ。

コピーしたように同じ。

同じ顔をした、無表情の女性兵士たちが百名。

同じ顔が百ほど並んでいる。

なんだろう、それだけで気持ちが悪い。


たぶん、レアちゃんの前マスターが作ったホムンクルスたち。

前に見た帝国にいた錬金術師ホムンクルスとは違い、作り物の域を出ないホムンクルス。

ただ戦うだけの兵力ってことなんだろう。

しかし、戦闘力だけなら高いのかもしれない。


「なかなか強そうではあるが、こちらの面子なら問題はなかろうて」


モンタギューさんの評では大丈夫そう。

時間もないし、突撃かな?



「なんと! どういうことか?」


龍王様が驚いている?

今まで余裕でいたのに、どうしたのか?


「龍に戻れなくなっておる。阻害されておる!」


え、龍に戻れない。

じゃあ、人の姿のまま。

神龍になれば、ブレスであの一団なんて、一撃だろうけど。

人間形態でもほぼ無敵に強いと思うけど。


「そして、敵も龍を持つか」


神龍様が空を見上げる。

その先に影が見える。

次第に大きくなる。

十頭ほどの龍。

それは、青白い毛を持つ……神龍?


「なるほどのお……。フィリーマリーか。これはクレメンティーレが来んで正解じゃったな」


フィリーマリーさん?

確かティーレちゃんの娘さん。

殺され、呪われドランゴンゾンビになっているところを、ルー君が浄化した。

フィリーマリーさんだとすると……

クローン?

フィリーマリーさんは神龍の中では力が弱かったはず。

だけど、神龍だ。

通常、人間では勝てない。

酒井たちは二名の犠牲を出して何とか勝利した。

もしかしたら今回の黒幕の錬金術師、そのサポートがあった可能性もある。

対神龍用の装備とかね。

今の私たちはそんなものを準備していない。


「さすがに人間の姿の儂で、あの数を押さえるのは難しいのお」


「そんな、龍王様……」


龍王様に抑えられなきゃ、私たちの負けだよ。


「まあ、そのうちエッカルードも、グンヴォルイエオリも来るじゃろうて。そこまで堪えれば良いのじゃよ」


「それ、かなり厳しい状況ですよ。それに今は時間がないんですよ!」


早くしないと爆発が起こる。

私たちはその近くまで転移しているんだ。


「そうじゃのお。しかし、ほれ、もう攻撃が来るぞ」


先頭の神龍クローンが口を開ける。

ブレス。

白銀のブレスが迫る!


龍王様が手を上げ、防壁を展開する。

ブレスは防壁に衝突。

光が分散し、周囲に飛び散る。

防壁を抜けることはない。


「一人だけなら問題ないのじゃがな。十人相手だとさすがに厳しいかのお」


「フィオナさん。地上部隊も来ます」


レティちゃんの声に、地上を見る。

レア・ドール隊(勝手に名付けた!)が接近している。


「魔法隊は神龍クローンを攻撃! 同時にブレスを撃たせないで! 近接隊はドール隊をお願い!」


とりあえず、そうするしかないけど……

戦力不足……


龍王様は防御に専念。

龍王様が攻撃できればフィリーマリー・クローン(これも勝手に命名!)の数を減らせると思うけど。

攻撃の隙にこちらに被害が出る。

せめてレア・ドール隊を早く殲滅できればよいけど……



「おおぉ! 喰らい尽くせハバキリ!」


エルリック君が突撃する。

……ルー君が言ってたっけ。

そうは見えないけど、彼はフレデリカちゃんとセリーナちゃんを溺愛していて、彼女たちが傷つくとキレるって。

だけど「喰らえ」って闇落ち勇者?

ハバキリって天羽々斬よね。

確か須佐之男が八岐大蛇の討伐で使った神剣。

羽々斬の扱いはそんな感じで良いのかな、元日本人として?

エルリック君の剣はレア・ドールの大剣を斬り落とす。

返す刀でドールの首を落とす。


「光輝け、トツカ! 亘理、出る」


亘理君も戦闘を開始。

あーた「亘理、出る」って、リアルロボ乗ってないじゃない。

最近の勇者たちって変わっているわよね。

きっと大谷君も変な子なんだろう。


莉乃ちゃんの弓が火の矢を大量に降り注ぎ、亘理君を援護する。

亘理君は全身が輝いている。

速い。

ルー君の光移動攻撃の次に速い感じ?

ドールの懐に飛び込んで、腹を切り裂く。

ドールは痛みを感じないようで、反撃に転じる。

けど、亘理君は容赦なくドールの首を落とす。

亘理君も必死なんだろうね。


モンタギューさんはいつも通りに突撃して暴れ回っている。

あの日本刀は光属性?

モンタギューさんのレベルだとレア・ドール程度の強さじゃ、普通の兵士と変わらないのかも。


ウィリアム君も……ん?

闇の力……

デスサイズが闇の力を発している。

うーん、死神感が増している。

ルー君も、鎌だからって闇属性は安直すぎないかしら?

ウィリアム君は闇属性を使って問題ない精神力ってことよね。


イザベルちゃんもデニースちゃんと連携して確実にレア・ドールを倒している。

問題なさそう。


レティちゃんとレアちゃんは魔法隊の護衛として近くに残っている。

攻めっ気の人が多いから、冷静な人がいて安心できる。


ニナちゃんとかミラベルちゃんも攻撃魔法をフィリーマリー・クローンに当てているけれど、ほとんどダメージはない。

でも、一応嫌がらせ程度にはなっているらしい。

クローンが嫌がって首を振っている。


「のう、フィオナ殿。あの宙に浮いている丸いのに攻撃できぬか? あれが龍化を邪魔しているようなのじゃよ」


龍王様の視線を追う。

だいぶ距離が離れたところ。

丸い物体が浮いている。

距離があるから大きさはわからないけど、たぶん大きい。

そして何か力を出しているような雰囲気。

フィリーマリー・クローン二頭がそれを守るようにして、近くを飛んでいる。


「わかったわ!」


私だって今まで何もしていないわけじゃない。

メテオ・ストライクの準備は完了している。


「落ちろ、隕石! そのタマゴを粉々にしてみせろ!」


球体の上空、大きな岩が生成される。

そして、轟音を響かせて落下する。

……クローンが岩をめがけてブレス。

くそ!

さすが、神龍のブレス。

岩は砕ける。

それでも小さくない破片が球に向かう。

破片が球に当たる直前、壁のようなものに当たり、弾かれる。

結界か。

球は無傷。

破壊には強力な魔法を直接当てる必要があるか。


「フィオナさん、危ない!」


レアちゃんの叫び。

あ、クローンのブレス……

龍王様の防御は他のクローンのブレスを受け止めている。

フレデリカちゃんの防壁で少し弱まったけれど、防壁を貫いてこちらに向かってくる。


レアちゃんが私の前に立ち、大剣を構える。


「させないわよ!」


大剣でブレスを迎え撃つ。

ブレスと大剣が押し合う。

そして、ブレスは方向が逸れて、右側へと着弾した。


「あ、ありがとう。レアちゃん」


レアちゃんの体はブレスの余波で傷ついている。

結構なダメージ、ぼろぼろだ。

血が流れ、痛々しい。

だけど、ゆっくりとリジェネの魔法で回復していく。


「フィオナさんたちは私が守ります。安心して魔法を撃ってください」


レアちゃんが頼もしい。

人間よりも高いステータスを与えられたホムンクルス。

最近は感情も見えるようになってきた。

ホムンクルスと呼ぶのは、もう似合わない。

いい意味で人間臭さが出てきている。

私たちの仲間だ。



「ラウレンホルト様、遅れました」


エッカルードさんが転移してくる。

一緒にリネットちゃんと、たぶん小早川姉妹。

あれが魔道甲冑か。

2メートル以上の甲冑がある。

そして、知らない男の人が二人。


「さて、久々に暴れようか!」


「ガブフェハルド様。ご自重ください」


ガブフェハルド様?

魔王だ。

ボールベリホルム魔王国、最強の戦士だ!


「春、すぐに出れる?」


「秋お姉ちゃん、大丈夫、行ける」


甲冑が起動する。

右手に大剣、左手に大砲を持つ、重装備の甲冑が立ち上がる。

これは迫力!



「ラウレンホルト様、参上いたしました」


赤いローブのイケおじ。

神龍、グンヴォルイエオリさんだ!


「エッカルード、私も来ました」


エッカルードさんの奥さん、オーヴェゲリーンさん。

そして、彼らが連れてきたのは……


「ははは、俺も全力を出すのは久しぶり。婿殿と戦ったとき以来か? 楽しいじゃねえか」


「ルーカスは……まだ、いないか。来る前に終わらせて、褒めてもらう!」


獣王さんと、娘のカティシャさん。

その後ろにはカティシャさんのお付きの黒豹の姉妹。


戦力は激増だ!

レア・ドールは殲滅できそう。

問題はフィリーマリー・クローン。

神龍を倒すのって、超級の魔法を何発も当てる必要がありそう。

これだけ人間形態の神龍たちがいれば、倒せると思う。

だけど、時間がかかる。


っ!

リッチの城あたりから魔力を感じる。

力が膨れ上がっていく感じ。

時間がない。

どうか間に合って……

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